1レースの重要性の高さ、そのことを強く認識させられた
文/編集部
フィリーズレビューの
『メインレースの考え方』で、
「ミクロコスモスが崩れるとすれば、ペースが思ったほど上がらず、出遅れて後方からとなり、大外を回る競馬を強いられた時だろうか」と書いたが、
単勝1.6倍の断然1番人気に推された
ミクロコスモスは追い込み届かず
4着に敗れた。
ミクロコスモスが負けるシーンを想像した時に、おおよそイメージした通りのレースぶりだったが、スタートは五分に出ていたし、1000m通過が
58秒5なら、
「出遅れて後方から」、
「ペースが思ったほど上がらず」という点は想像と食い違う。
だが、
ミクロコスモスは追い込み切れなかった。しかも、
3着レディルージュから3馬身半差と大きく離された4着である。
ミクロコスモスがマークした上がり3Fは
35秒9。対して、好位につけていた1着
ワンカラット、2着
アイアムカミノマゴがマークした上がり3Fは
35秒8。
桜花賞の優先出走権を手にした
ワンカラット、
アイアムカミノマゴ、
レディルージュが思った以上に力をつけていたのか。確かに、勝った
ワンカラットは
阪神JFで折り合いを欠いて
12着に大敗していたが、今回はそんな素振りはまったく見せず、気分良さそうに好位のインを走っていた。
レース後、
藤岡佑介騎手がインタビューで
「調教から精神面でかなり成長が見られたので、スタートだけ集中して、ゲートさえ出られれば、あとは心配することはありませんでした。距離が延びても今日の内容なら大丈夫だと思います」と語っていたが、それも頷ける。正直、別の馬じゃないかと思ったほどだ。
では、
ミクロコスモスが思った以上に走れなかったのか。
クイーンCから中2週で
プラス8kg。馬体重はデビュー以来最高となる
466kgだったが、その影響で直線での爆発力に欠けたのか。判断が難しいところが、上がり3Fの数字上では、そうなるべくしてなった結果だろう。
いずれにしても、馬券圏内を占めた3頭のレースぶりは、コースの特性を考えれば理にかなったものだった。同じ
阪神芝1400mで行われた今年の
阪急杯を思い起こしてみても、4角で3番手以内につけていた
ビービーガルダン、
ローレルゲレイロ、
ドラゴンファングが1、2、3着となり、外枠に入った1番人気の
ファリダットが外を回って追い込み切れず
7着に敗れている。
さらに言えば、
ビービーガルダン、
ローレルゲレイロ、
ドラゴンファングは
芝の1000~1200mを4角2番手以内から押し切って勝利した経験があるのに対し、
ファリダットは
芝の1200m以下で勝利経験がなく、3勝はすべて芝の1400m以上で4角4番手以下から差したものだった。
では、
フィリーズレビューはどうかというと、
ワンカラットは
芝の1200mの新馬戦を4角2番手から勝利していて、
アイアムカミノマゴ、
レディルージュは
ダートの1000mの新馬戦を4角3番手以内から押し切って勝利していた。対して、
ミクロコスモスは
芝1600mしか出走経験がなく、芝1400mは今回が初めてだった。
人気薄の先行馬が残って波乱を演出するのは、今年の3歳限定重賞のトレンドとも言えるが、前が有利というのは競馬の原則でもある。特に、
阪神芝1400mで前が残る展開では、結果として1000~1200mでも先行して押し切れるスピード・タイプが強く、1600m以上だけで良績を残しているタイプには苦しい、ということだろう。
ワンカラット、
アイアムカミノマゴ、
レディルージュにあって、
ミクロコスモスに足りなかったもの。
ミクロコスモスは潜在的には、
1200mでも先行して押し切れるスピードがあるのかもしれないが、そういう競馬を経験したことがなかった。それが
阪神芝1400mという舞台において、明暗を分ける結果となったのだと思う。
もちろん、今回の結果だけで
ミクロコスモスの評価を下げるつもりはない。舞台設定さえ替われば、今回の上位馬を逆転することだって十分に可能だろう。つくづく、前が詰まって4着に敗れた
クイーンCが痛い。
勝負の世界において、タラレバは通用しない。どんなスポーツでも、トーナメント戦などでは1試合1試合が生き残りを賭けた戦いだ。競馬でも、特に
クラシック戦線においては、1レースの重要性が高い。そのことを強く認識させられた
フィリーズレビューだった。