数年追える? 今後に向け馬券的妙味たっぷりの2頭
文/編集部
3歳牝馬三冠の結果に、もっとも直結する前哨戦といえば?とりあえず名前が挙がるのは
チューリップ賞だろうか。近年はこの
フラワーCから、恐るべき勢いで
G1勝ち馬が現われ続けている。それは
3歳G1のみに留まらず、
古馬G1を含めてもそうなのだが、3歳牝馬の春のローテは特にここ数年で、その常識が大きく変わりつつある。
具体的な数字を挙げると、2000年代に入って以降、
チューリップ賞出走馬中8頭がG1馬となっており、そのすべてが
3歳三冠戦の勝ち馬で、その後、
G1を制したのは
ウオッカ、
ダイワスカーレット、
スイープトウショウの3頭。一方、
フラワーCからも
8頭のG1馬が出ており、うち6頭が
3歳三冠戦でタイトルを獲得し、その後、8頭中4頭が
G1を制した。
90年代のフラワーCというと、
桜花賞よりも、どちらかといえばデビューの遅れや距離適性などから、
オークス1本に狙いを絞った非最前線の馬、あるいは、
クラシックに出走権がなかった外国産馬のためのレースだった。前者なら94年3着の
チョウカイキャロル、後者では97年1着の
シーキングザパールがその代表例だろう。
そんな積年の傾向がガラリと変わったのは
04年。
02年にもフラワーC勝ち馬として、
スマイルトゥモローが初めて
オークスを制すという、日陰に日が差すような出来事はあったが、
04年の
ダンスインザムードは
フラワーC1着を経て、第1冠である
桜花賞を制した。それは
80年代のフラワーC設立当初にあった、古いローテの常識が突然蘇った瞬間であった。
翌05年も、
シーザリオが
フラワーCの次走の
桜花賞で
2着となり、その後、
オークスを制覇。06年には
未勝利戦、
フラワーC、
桜花賞と、3連勝で
キストゥヘヴンが戴冠。この時の2着馬
フサイチパンドラは、その後、
エリザベス女王杯を勝ち、3着馬
ブルーメンブラットは08年に
マイルCSを制し、なんと、このレースの上位3頭までがG1馬となった。
最初に挙げたように、3歳三冠の勝利数では
チューリップ賞出走組にやや及ばないまでも、その後のG1勝利数では
フラワーC組が上を行く。春に限らず、今後末永く馬券でお世話になるという意味では、
今年のこのレースも注目度はG1級なのだ。生観戦できなかった方には、JRA公式サイトの映像や結果などで、正しく記憶に留めておくことをオススメしたい。
今年1番人気に推されたのは、2月の
クイーンCを制した
ディアジーナ。
唯一の重賞ウイナーということで、人気に推されたのは当然だったが、出走16頭中、この馬とダリア賞勝ち馬
パドブレを除いた残り14頭はみな1勝馬。
やや低調なメンバー構成がその人気に拍車をかけた。単勝の最終オッズは
1.5倍。2番人気には
中山芝1800mで
[1.1.0.0]だった
マジックシアターが続いたものの、
9.9倍という、かろうじてひと桁台の、離されたオッズに留まった。
レースではまず発馬の際、実績的2番手である
パドブレが出遅れ。ここまで2番手追走で結果を出している
ディアジーナは、大外枠からハナをも奪わん勢いで果敢に前へ。負けじと
ナリタシリカ、
ショウサンウルルも前を行く。しかし、1コーナーのコーナーワークで最内から
ヴィーヴァヴォドカが抜けてハナに立つとペースは安定。
約1馬身半のリードで逃げる
ヴィーヴァヴォドカに対し、
ディアジーナは4番手を追走。4コーナーの入口では、2番手を追走していた
ナリタシリカがいったん前を捉えにかかるも、直線に差しかかると
ヴィーヴァヴォドカが二枚腰を発揮。坂で伸びない後続勢の中、唯一、
ディアジーナのみが追撃の脚を見せたものの、クビ差まで迫るのが精一杯のゴールだった。
終始最内を走り続けた勝ち馬に対し、序盤から外を回り続けた2着馬。両馬にはコース取りの差もあったが、
ヴィーヴァヴォドカの粘り腰に光るものがあったのもまた事実。母
トウカイステラは現役時代の4勝をすべて1000mで挙げた快速派だったが、
父ダンスインザダーク、母父トウカイテイオーという血統背景からは、むしろ
距離延長や
成長力に魅力がたっぷり。
敗れたとはいえ見せ場は作った
ディアジーナも、管理する
田村調教師は父
メジロマックイーンの名を挙げた上で
「オークス向き」と明言しており、目先の桜よりもその先々で期待が持てそう。前述した
フラワーCの傾向からも、今後、年単位で追い続けるだけの価値は十分。
クラシックに向け、そして
先々の馬券に向け、面白味のある2頭の名が浮き出たレースとなった。