天才肌×天才肌。このコンビは大仕事をやる雰囲気がある
文/編集部
最近では決して珍しいことではないけれど、今年の
スプリングSの出走馬は、その父が馴染み深い馬ばかりだった。
出走馬16頭のうち、
輸入種牡馬または
海外繋養種牡馬の産駒は
3頭だけ。その3頭のうち10番人気以内だったのは
イグゼキュティヴ(
父チーフベアハート)だけで、上位人気馬たちは、
日本で走り、活躍した馬の産駒ばかりだった。
1番人気
アンライバルドは
ネオユニヴァース産駒、2番人気
フィフスペトルは
キングカメハメハ産駒、3番人気
リクエストソングは
シンボリクリスエス産駒。いずれの父も
日本の芝G1を2勝以上した名馬で、その主な戦績がすぐに頭に浮かぶ人も多いだろう。
今回の
スプリングSで単勝オッズが10倍を切っていたのはこの3頭だけで、
2.3倍(
アンライバルド)、
4.6倍(
フィフスペトル)、
5.4倍(
リクエストソング)と三強の様相を呈していた。そこで、この3頭を父の戦績を元に分析してみることにした。
ネオユニヴァース、
キングカメハメハ、
シンボリクリスエスの3頭を比較して、まず頭に浮かんだのは
『早熟性』だった。
ネオユニヴァースは
皐月賞と
ダービーを制し、
キングカメハメハは
NHKマイルCと
ダービーを連勝した。それに対して、
シンボリクリスエスは
ダービーで
2着に好走しているものの、初G1制覇は
3歳秋の
天皇賞。
3歳春までの完成度という点では、
ネオユニヴァースや
キングカメハメハの産駒に分があるのでないかと思われた。
現4歳がファーストクロップである
シンボリクリスエス産駒を見ても、その傾向は感じられる。
では、逆に、
シンボリクリスエスのセールスポイントは何か。それは、
天皇賞・秋の勝利をはじめ、
G1・4勝のうち3勝を中山で挙げていることではないかと思った。
ネオユニヴァースも
スプリングSと
皐月賞を
中山で制しているが、
キングカメハメハは生涯唯一の敗戦が
中山(
京成杯での
3着)。
『中山適性』という面では、
シンボリクリスエスと
ネオユニヴァースの方が上であるように感じられた。
ネオユニヴァースについては、
前走から距離が短縮されることがどうかと思われた。
同馬の3歳春の重賞制覇を振り返ってみると、
白梅賞(1600m)1着→
きさらぎ賞(1800m)1着→
スプリングS(1800m)1着→
皐月賞(2000m)1着→
ダービー(2400m)1着。徐々に距離を延ばされて連勝を重ねていた。
前走から距離を短縮されての重賞では、
宝塚記念4着、
神戸新聞杯3着、
ジャパンC4着、
大阪杯1着。
大阪杯は休み明けでもあったが、アタマ差の辛勝だった。
この傾向は産駒にも見られていて、
「メインレースの考え方」でも記されていたが、
ネオユニヴァース産駒は、前走から距離を短縮されての芝が[1.7.3.23](3月21日終了時点)だった。
そんな
ネオユニヴァースに対して、
キングカメハメハは
毎日杯と
NHKマイルCの優勝がどちらも
距離短縮時で、
シンボリクリスエスも
神戸新聞杯と
天皇賞・秋を
距離短縮時に勝利している。両馬は距離延長時でもG1を勝ったことがあり、
『距離の変化への対応力』が高いと感じられた。
以上をまとめると、
ネオユニヴァース産駒の
アンライバルドは
距離短縮の1800mがどうか? キングカメハメハ産駒の
フィフスペトルは
中山で勝ち切れるのか? シンボリクリスエス産駒の
リクエストソングは
3歳春の重賞を勝てるのか? ということが、それぞれのキーポイントとして挙げられた。
結果的には、
フィフスペトルは不利もあったようだが差し切れず、
リクエストソングも伸びを欠いた。
ネオユニヴァース産駒の
アンライバルドが
1800mでも抜群の伸びを見せ、そのマイナスデータを打ち破ることになった。
レース後のインタビューで、
アンライバルドの
岩田騎手は
「ゲートを少し出して行った」と話していたが、それを聞いた時、その行動は
諸刃の刃にもなり得たのではないかと思われた。
つまり、ある程度出して行けば距離短縮のペースにも乗りやすいだろうが、一歩間違えば掛かる不安も出たのではないかと思ったのだ。
アンライバルドはテンションが上がりやすく、
京都2歳Sで
3着に負けた時も掛かって伸びを欠いたものだった。よくゲートを出して行ったなあと思った。
実際、今回も中盤でペースが緩み、掛かり気味になっていたが、向こう正面に入ると落ち着き、流れに乗っていた。この辺りは騎乗者にしか分かり得ない感覚なのだろうが、どこまでだったらアクセルを踏んでも暴走しないか、
岩田騎手は掴んでいたのだろう。
アンライバルドは、
フサイチコンコルドや
ヴィクトリーなど
天才肌の馬が多い一族の出身だが、
岩田騎手も
天才的な立ち回りを見せることが多い騎手。このコンビ、この後も何か大仕事をやりそうな雰囲気がある。
今回の快勝劇によって、
アンライバルドは、
ロジユニヴァース、
リーチザクラウンと並んで、
皐月賞での
『三強』に目されることになりそうだ。
この3頭の父は、いずれも
3歳春のクラシック勝ち馬。前述したように
ネオユニヴァースは徐々に距離を延ばされてG1を2勝したわけで、その点では、
弥生賞からの臨戦(2000m→2000m)になる
ロジユニヴァースより一歩先に出ているかもしれない。
リーチザクラウンの父
スペシャルウィークは、G1・4勝を
東京と
京都で記録し、
中山では
4戦2勝ながらG1では2着(有馬記念)と3着(皐月賞)に敗れている。
その産駒は、
中山での芝重賞が[1.3.2.39]で、
牡駒に限ると[0.3.2.28]と勝った馬が出ていない。
中山での重賞ということに関して言えば、
スペシャルウィークより
ネオユニヴァースの方に分がありそうだ。
ネオユニヴァースも
スペシャルウィークも
ダービー馬だけに、
アンライバルド、
ロジユニヴァース、
リーチザクラウンの真の戦いはダービーかもしれないが、その前に、
クラシック第一弾の
皐月賞でどんな結末が訪れるか。かなり激しい激突が待っていそうだ。