高パフォーマンスを見せた2頭はこの先も期待できるはず
文/編集部

先週のフラワーC同様、ここ10年くらいの間に、すっかり
出世レースとして知られるようになった
毎日杯。
99年勝ち馬
テイエムオペラオーは七冠馬となり、01年勝ち馬
クロフネは芝、ダート両方でG1を制し、04年勝ち馬
キングカメハメハと昨年の勝ち馬
ディープスカイは圧倒的な強さでNHKマイルC、ダービーの変則二冠を達成した(96年勝ち馬
タイキフォーチュンも後にNHKマイルCを制覇)。
クラシック馬やG1馬を輩出するどころか、
競馬史に残るようなとてつもない大物がこのレースをステップに、その素質を開花させているのだ。このレースのテーマは、
先輩勝ち馬たちに続く大物の出現があるのかどうか、または、
勝ち馬がクラシックやG1で通用する力を示したかどうか、であるといってもいい。
タイキフォーチュンを除く、前出の4頭の過去の勝ち馬たちは、2着に2馬身以上の差をつけて勝っており、上がり3ハロンのタイムは出走馬中で1位、もしくは2位だった(
ディープスカイのみ2位で、他3頭は1位)。しかし、重要なのはそういった数字面ではなく、
他の出走馬を圧倒するようなパフォーマンスを見せられたかどうかということ。
それもそのはずで、
弥生賞、
スプリングSといった主要トライアルが終わり、それらよりも出走メンバーが手薄になりがちな
毎日杯において、
突き抜けるような強さを見せないことには、この先のG1戦線で上位争いはできない、ということかもしれない。
そういう意味では、今回の勝ち馬の
アイアンルックには十分に合格点をあげてもいいのではないだろうか。前出の4頭のような怪物級に育つかどうかはさておき、少なくともここと青葉賞を連勝し、ダービーで2着に入った06年の勝ち馬
アドマイヤメインと同等以上の評価は必要だろう。
アイアンルックは前半61秒0のスローペースを後方からの競馬。出走馬の多くが手綱を引っ張る中、
アイアンルックも多少引っかかり気味に追走していた。圧巻だったのは直線に向いてから。上がり3ハロンが
11.8-11.0-11.7という上がり勝負の競馬で、
ゴールデンチケットがゴール前で抜け出し、勝ったかに思われたところを、
アイアンルックはこれを並ぶ間もなく矢のように外から差し切ってしまった。
上がり3ハロンは
33秒6。いくらスローペースの上がり勝負になったとはいえ、いまの阪神でこの上がり時計は出色のもの。古馬オープン級にもヒケをとらないのではないか。完全に他馬の上を行った内容だった。
またその差し脚は、最後の直線で多少エンジンが掛かるのが遅かったように、“斬れた”というより、まだまだ大きな爆発力を感じさせるものだった。どちらかというと、
皐月賞よりもダービーに向くタイプのように見えた。
牡馬クラシック戦線は
ロジユニヴァース、
リーチザクラウン、
アンライバルドの3強と目されている。
アイアンルックは、父がこれまで中央ではオープン級の活躍馬を出していなかった
アドマイヤボス(その父
サンデーサイレンス)で、母父がこちらも大物を出していない
ヘクタープロテクター。血統面では3強に比べてスケールで劣るような印象があるが、レース内容は負けてはいない。それらに次ぐ、いや
それらと同等の有力馬がこのレースから出現したといってもいいだろう。
そして、もう1頭、今後も注目したい馬がいる。最後の直線で
アイアンルックを上回る脚(上がり3ハロン
33秒5)で3着に入った
アプレザンレーヴだ。スタートで出遅れたため、
アイアンルック以上に後ろからの競馬となってしまい敗れてしまったが、この馬のスケール感はまだまだ見限れない。この馬も東京のような広いコースでこそだろう。
ただ、今回気になったのは、調教駆けするといわれるこの馬が、直前の追い切りでは併走馬に遅れてしまったこと。
アプレザンレーヴは調教の内容が実戦に直結するタイプだとすると、今回は本調子ではなかったのかもしれない。
アプレザンレーヴはこの後、
青葉賞や
プリンシパルSといった
ダービーのトライアルレースを目指すと思われる。実績のある東京コースなら、ダービーの権利取りは十分に可能だと思う。今後の巻き返しに期待したい。