時計内容から05年朝日杯FSのスーパーホーネットとダブる印象
文/編集部
過去2勝はともに
東京で、
中山では③③④着だった
サンカルロ。
「右回りではまた③~④着ぐらいなのでは?」と心配する向きもあったが、中団からうまく馬群をさばき、終わってみれば
1番人気に応えての2馬身差楽勝だった。
勝ち時計は
1分33秒8で、レースの上がり4F→3Fが
47秒6→
35秒4。掲示板にあがったこの数字を見た段階では、
「ふ~ん、まずまずの時計だね」という程度にしか感じなかったが、後で詳しいラップタイムを見た時、
「おおっ、すごいじゃん」に変わった。
テンからのラップタイムを並べてみる。12.5-10.8-11.6-11.3-12.2-
11.7-
11.9-
11.8。
まず何が珍しいって、上がりがかかりやすい
中山において、
「ラスト3Fのラップがすべて11秒台」という点が挙げられるだろう。
京成杯AHをはじめ
古馬混合の中山マイル重賞ではそれほど珍しくもないが、
2~3歳限定のレースともなると、その比率はガクンと減る。
90年以降の2~3歳限定の中山芝1600m重賞で、
「ラスト3Fのラップがすべて11秒台」というレースは過去に、
95年京成杯(勝ち馬
マイティーフォース)、
01年ニュージーランドT(勝ち馬
キタサンチャンネル)、
05年朝日杯FS(勝ち馬
フサイチリシャール)の3例だけ。
この3レースの勝ち馬がすべて3~4コーナーを1~2番手で追走して押し切っているのに対して、
サンカルロは
3~4コーナーを5番手以下で追走して差し切ったという内容も珍しく、秀逸だ。
中山芝1600m重賞で、
「ラスト3Fのラップがすべて11秒台」というレースは、古馬の重賞も含めて、
「後続勢がなし崩し的に脚を使わされて、最終的に前に行っていた馬がそのまま押し切り」というケースが基本的に多い。その意味で、
サンカルロのような勝ち方は珍しく、価値が高いと言える。
先述の3レースを、もう少し詳しく見てみよう。それぞれの前半5F通過タイムと勝ち時計は、
95年京成杯が
60秒0→1分35秒1、
01年ニュージーランドTが
60秒5→1分35秒7、
05年朝日杯FSが
59秒0→1分33秒7。
今回は
58秒4→1分33秒8で、先述の3レースと比べて前半5F通過はもっとも速く、勝ち時計は
05年朝日杯FSに次ぐ2位。それも
0秒1遅いだけ、ということになる。
05年朝日杯FSと言えば、
フサイチリシャールが制したレースだが、出走馬の中で後にもっとも出世したのは、
07→08年のマイルCSで連続2着の
スーパーホーネットだろう。
スーパーホーネットは
朝日杯FSで、
3角7番手→4角6番手の待機策から差して、クビ差届かなかったものの、
勝ち馬とタイム差なしの2着。レースぶりから、
サンカルロは勝ち馬の
フサイチリシャールというより、
スーパーホーネットの方とダブって見えてくる。後にG1で連対するほどの馬にまで、出世ができるだろうか。
サンカルロの父
シンボリクリスエスの産駒は、
フェブラリーSで
サクセスブロッケンが
JRAのG1初制覇を成し遂げたが、
芝G1ではまだ勝ち馬が出ておらず、
昨年の桜花賞における
ソーマジックの
3着が最高。
また、
ニュージーランドTが
中山で行なわれるようになった00年以降、勝ち馬の
NHKマイルCにおける最高成績は、03年
エイシンツルギザンの
2着。他に出走した7頭は、すべて
5着以下に負けている。
こうして見ると、過去の例から、乗り越えるべき壁は高そうに思えてくるが、
サンカルロは冒頭にも記した通り、
もともと左回り向きという印象もあった馬だ。今回の優秀な時計内容などから、
NHKマイルCを制しても不思議ないものを十分に感じさせられる。
ちなみに、
サンカルロが2月に勝った
クロッカスS(東京芝1400mのOP特別)は、ハイペースの高レベル戦で、
サンカルロの他にも、3着
アイアンデュークが
次走で3歳500万下を勝利、4着
タイガーストーンが
2走後にマーガレットSで2着、6着
ダブルウェッジが
次走でアーリントンCを勝利、7着
ジョーカプチーノが
1~2走後に萌黄賞→ファルコンSと連勝。出走馬の後の好走が、OP特別の1戦にしては、異様なほど目立つ。
そういった戦績の後押しも含めた上で、
サンカルロは次走予定の
NHKマイルCに限らず、その先々も含めて、
長い目で将来を楽しみにしたい1頭になったと言えそうだ。