意外にもマイル重賞初制覇、G1獲りに向け純度を高めた勝利
文/編集部

今年は
10頭立てという少頭数で行なわれたこのレース。出走馬の名を見渡すと、G1勝ち馬は
昨年のエリザベス女王杯を制した
リトルアマポーラだけ。しかし、かたや
重賞未勝利馬も、
ヒカルオオゾラと
ライブコンサートの2頭だけ。
ここはレースの性質上、上がり馬のための登龍門ではなく、主に
マイル路線既存の少数精鋭が集いし一戦となった。
唯一のG1馬である
リトルアマポーラは、最終的に
単勝12.4倍の4番人気。
芝1600mでは4戦してG3のクイーンCを含む3勝をマーク、唯一の敗戦は桜花賞での0秒2差の5着と、マイラーとしての実績には確かなものがある、にも関わらずである。
芝2200mの
エリザベス女王杯を勝ったことで、おそらくマイラーとしてのイメージが希薄になったのだろう。そして、
休み明けで、
牡馬との対戦が京成杯以来となることも影響したか。
一方、
1番人気に推されたのは
ここまで重賞3勝、G1未勝利ながらマイル路線のトップコンテンダーとして、この路線を引っ張っている
スーパーホーネット。2番人気は
ここまでマイル5戦4勝・2着1回と、休養を挟みながらパーフェクト連対を維持している
ヒカルオオゾラ。
3番人気には、前走で
中山記念を制した重賞6勝馬
カンパニーが推された。
イメージとしては
リトルアマポーラよりこちら3頭のほうがマイラー色が強い。結果を見ても、大筋その見解に間違いはないのだが、細かくその勝鞍を再チェックしていくと、彼らは案外、純粋種のマイラーではないことがわかる。
スーパーホーネットは
マイル重賞未勝利、
ヒカルオオゾラは
重賞自体未勝利で、
カンパニーは
1800mが最多勝距離。実績だけを見比べれば、
よっぽどリトルアマポーラのほうがマイラーっぽいとも言えた。
レースは全馬揃ったスタートから、まず7枠の
ビービーガルダンがハナへ。ただ、同馬はこれまで芝1200mで5勝を挙げ、1400mでは3月の
阪急杯が初勝利で初重賞制覇というキャリア。さらなる1ハロンの距離延長に不安を残すため、スプリント戦のようにテンから飛ばすわけでもなく、最初の1ハロンを
13秒0というかなり遅めのペースで通過した。
ビービーガルダンの1000m通過は
60秒2と、重賞のこの距離にしては直線までの間、かなりスローに流れたことがわかる。最終的に
7着に終わった
リトルアマポーラは、序盤、
福永騎手が手綱を絞りつつ、掛かり気味に前目を進んでいた。
4コーナー。
ビービーガルダンが先頭のまま、同枠の
タマモサポートがその外から忍び寄る様相で直線に向き、全馬いよいよ
「よーいドン」。直線の下り部分では位置取りが固まったまままったく動かず、7枠2頭による粘り込みも頭をよぎる攻防となったが、残り200mを切って急坂に差しかかると状況はガラリ一変。
「よーいドン」の中でも、持続的に
上がり33秒0の末脚を繰り出していた
スーパーホーネットがまず外から抜け出すと、その内からは9番人気
スマイルジャックがそれに追従。他方、残り30mでは、大外から
カンパニーが
スーパーホーネットを強襲するも捕え切れず、クビ差まで詰めたところがゴールだった。
意外にも初めてマイルの重賞を勝った
スーパーホーネットは、07年のこのレースでは、
15頭立ての最下位という結果に終わっている。
コンゴウリキシオーがハイペースで逃げ、レコード勝ちする中で後方ママで終わった当時と、スローペースで流れ、ある程度の位置で流れに乗れた今回とでは、内容も着順も両極端。
スーパーホーネットは、これで
「芝1400~1800mの重賞勝ち馬」ではなく、
「マイルの重賞勝ち馬」に純度を高めた。その点では、
悲願のG1獲りに向け、また一歩前進したといえるだろう。
この後は
安田記念に直行するか、もう1戦挟むかは、オーナーと矢作調教師の協議により決定されるという。