速い時計になると分かっていても、電光掲示板を「二度見」させられた
文/編集部

編集部のPOGで指名しようと検討したことがあり、
ウォータクティクスにはデビュー前から注目をしていた。
ウォーエンブレム×トニービンという配合で、母系は
エアグルーヴと同じ。当然、
『芝』での活躍を見込んで注目していたわけだが、今回の
アンタレスSの快勝劇を見て、その見立てが間違っていなかったことを実感した。
ダートで6戦6勝、
芝はデビュー戦で一度走って3着に敗れているので、
『芝での活躍』が実証されたわけではないが、
ダート1800mでの日本レコード、しかも
驚異的なタイムを叩き出したのだから、もうほとんど当たったも同然でしょう(笑)。
今年、芝の1800m重賞は、
福島牝馬Sまでで9レースが行われたが、そのうち勝ち時計が
1分47秒8より速かったのは、
小倉大賞典(
1分44秒9:
サンライズマックス)と
共同通信杯(
1分47秒3:
ブレイクランアウト)だけ。
京都地方は土曜日に強い雨が降り、レース当日の日曜日も時折雨が降ったので、時計の速い決着になることはレース前から分かっていたが、それでも勝ち時計(1分47秒8)が表示された時は、思わず
「二度見」してしまった。これはダート馬が出せる時計じゃないだろう。
2着に入った
ワンダースピードをはじめ、先行各馬はいつもより早めに動くような形になったが、それでも
ウォータクティクスはまったく意に介さず飛ばし、結局、直線に入って後続を突き放してしまった。
ワンダースピードとは
2kgの斤量差も影響したのかもしれないが、自らペースを握ってレコードを樹立されたのだから、これでは相手を讃えるほかにないだろう。
ワンダースピードにしてみたら、
「あんたの方がよっぽど“ワンダースピード”だよ」と言いたくなったのではなかろうか。
ワンダースピードは、過去に
阪神ダート2000mのレコードを2回樹立しており、4着となった
マコトスパルビエロも、3歳時に
関越S(新潟ダート1800m)をレコードで押し切った実績がある。
それを考えれば、
3着に入ったボランタスは、レコードホルダーたちが作り出した高速決着の中、よく健闘したと言えるだろう。
ボランタスは
ティンバーカントリー×サンデーサイレンスという配合で、
芝重賞での連対歴もあるインセンティブガイの半弟。こんなスピード決着にも対応可能な血統的下地があったということだろうか。
いずれにしても、今年の
アンタレスSは、出走16頭のうち15着の
ダイナミックグロウまでが、
昨年の優勝時計(1分50秒5)を上回るタイムで走破する結果になった。これは、前年の勝ち時計を3秒近く短縮する結果となった、今年の
小倉大賞典とよく似ている。
今年の
小倉大賞典に出走した馬は、高速決着の中で好走した反動もあったのか、
1~4着に入った馬がその後に勝ち鞍を挙げられていない。しかし、
5着以下に敗れた馬の中から、その後に勝ち星を挙げた馬が3頭出ている。
小倉大賞典で上位に入線した馬が、その後も重賞路線を歩んでいるのに対して、下位に敗れた馬たちはOP特別などで走っているという面はあるにせよ、高速決着となったレースは特殊であることは認識しておいたほうがいいのだろう。
今回のアンタレスSで馬券圏外に敗れた馬も、条件さえ整えば巻き返すチャンスは十分あるはずだ。
ちなみに、
中央のダート1800mを1分48秒台で勝ったことがある馬は6頭いるが、その次走着順は次のようになっている。
コウエイダッシュ91年4月7日①着
↓
91年6月29日⑦着
プレミアムサンダー97年11月15日①着
↓
98年8月9日②着
エムアイブラン98年1月6日①着
↓
98年2月1日⑥着
マンボツイスト01年1月21日①着
↓
01年2月18日⑮着
ハギノハイグレイド02年4月21日①着
↓
02年5月19日①着
サカラート04年7月10日①着
↓
05年1月23日④着
連勝したのがハギノハイグレイドだけというのも気になるが、それ以上に、
6頭中3頭が次走までに間隔を開けていることが気に掛かる。
ウォータクティクスには、とにかく今後も無事に行ってほしいものだ。そして、できることなら、
アンタレスSにも登録していて、結局、
かしわ記念(5月5日)に向かうことになった同世代の
エスポワールシチーと同じレースに出走し、激辛な先行争いをして、どっちが速いのか、雌雄を決してほしいものだ。