秋に東京でウオッカに挑戦状を叩きつける日が楽しみ
文/安福良直

いきなり手前味噌な話で恐縮だが、
『サラブレ7月号』の
宝塚記念特集で、私は、
阪神芝2200mは差し・追い込み馬が優勢で、他の有力馬の動きをうかがい、直線に入って一気に襲いかかる競馬をした馬が強い、という内容のことを書いた。
今回の
ドリームジャーニーは、まさにその通りの競馬。上位人気馬が中団に集まる展開だったが、その中でいちばん後ろにつけ、4コーナーで大外に進路を取ると、上がり34秒3の末脚で一気に勝負をつけてしまった。
大阪杯で
ディープスカイを外から差し切った時も強かったが、
今日はまさにその再現、というか、その時よりも楽な勝ちっぷり。着差は1馬身と4分の3だが、ゴール前では手綱を抑える余裕があったくらいで、
着差以上の完勝と言える。
ドリームジャーニーと言えば、2歳で
朝日杯FSを勝ったがために、
「早熟の天才」というイメージがどうしてもつきまとう馬だった。3~4歳時も重賞を勝ってはいるが、肝心の
G1になるとサッパリ。しかも、
小柄な馬なので、そのイメージはさらに強まっていた。
でも、
昨年の有馬記念で
4着に踏ん張ったあたりからは、一転して
「本物の成長」を始めたような気がする。今年に入ってからは、最初(AJC杯8着)は敗退したものの、
大阪杯で
ディープスカイを負かし、
春天で
3着に食い込み、そして今回の完勝。2歳でG1を勝ったのはたまたまで、実は
「大器晩成」が本当のこの馬の姿かもしれない。
もともと血統を見れば、
ドリームジャーニーの父
ステイゴールドは晩年がいちばん強かったし、母父
メジロマックイーンは古馬の長距離王。晩成のステイヤーなのは当然かもしれないし、さらに
ノーザンテーストのインブリードがある、という点もポイント。
底知れぬ成長力があると言われた
ノーザンテーストの血、それが開花したとなれば、今後は手をつけられない強さを発揮するかもしれないぞ。秋に東京で
ウオッカに挑戦状を叩きつける日が楽しみになってきた。
2着争いは、先に抜け出した
サクラメガワンダーが
ディープスカイを押さえて先着。
先行粘り込みは、
『サラブレ7月号』で書いた
阪神芝2200mのセオリーに反することだから、これは
馬が強くなったと言っていいのかな?
サクラメガワンダーもここまでの歩みは
ドリームジャーニーに似ていて、2歳時に
アドマイヤムーンを負かしてクラシック候補に躍り出ながら、その後はひと息という走りがずっと続いていた。
しかし、ここにきて
金鯱賞を完勝し、今回の
2着。こちらもインブリードではないが、
ノーザンテーストの血を引いている馬であり、
6歳にして底力がついてきたと考えても不思議ではない。
一方、残念な結果に終わったのが3着だった
ディープスカイ。道中では前に
サクラメガワンダーと
マイネルキッツ、内に
アルナスライン、後ろに
ドリームジャーニーと、有力馬にズラリと囲まれる厳しい展開だったが、まあ、このあたりはダントツ人気馬の宿命。
これをはね返して勝てないことには、凱旋門賞どうのこうのは言ってられない、というところだったと思うが、肝心の4コーナーでの手応えが悪く、
ドリームジャーニーにあっけなく交わされてしまった。最後はジリジリと伸びているのでスタミナ切れではなく、
勝負どころでズブくなっていると考えたほうがいいのかも。
思えば、昨年の秋天以降
「負けて強しの内容」と言われながらも4連敗していて、
負けグセがつきつつあるのかもしれない。
ノーザンテーストの血が入っていない馬だし(って、あまり関係ないけど)、ちょっと心配だ。
凱旋門賞うんぬんよりも、
どこかで少し楽な相手に勝って、勝ちグセをつけることが、いまの
ディープスカイには必要なのかもしれない。