まだ日替わりヒーローの域を脱したわけではないけど……
文/編集部
昨年は
スリープレスナイトが
CBC賞、
北九州記念、
スプリンターズSを制し、
芝1200m重賞で
3連勝を飾った。今年の
高松宮記念でも
スプリンターズS以来の休み明けながら、
2着に好走していたのだから、現状、
芝スプリント路線のピラミッドの頂点は
スリープレスナイトで大方の見解は一致するはず。
ところが、その
スプリンターズSを境にして、
3歳以上&4歳以上の芝1200m重賞では、毎回、勝ち馬が異なっている。
08年京阪杯は
ウエスタンダンサー、
09年シルクロードSは
アーバンストリート、
09年オーシャンSは
アーバニティ、
09年高松宮記念は
ローレルゲレイロ、
09年CBC賞は
プレミアムボックス。
プロ野球などでは、日替わりでヒーロー(活躍した選手)が出る状態は、チーム状況が好調であること示す場合が多い。では、
日替わりでヒーロー(重賞勝ち馬)が出ている状況の芝スプリント路線が、同じような状況なのかと聞かれれば、返答に窮するところである。
ちなみに、前述した5レースでは、
1番人気馬がみな2着以下に負けている。
08年京阪杯は
ビービーガルダンが
6着、
09年シルクロードSは
スプリングソングが
14着、
09年オーシャンSは
キンシャサノキセキが
10着、
09年高松宮記念は
スリープレスナイトが
2着、
09年CBC賞は
アーバンストリートが
5着だった。
言わば、
期待された選手(馬)がきちんと結果を残せておらず、その穴を埋めるように他の選手が結果を出している状況とも受け取れる。その観点から言っても、現在の芝スプリント路線が、ピラミッドの頂点に位置するような有力馬で鎬を削り合っているとは思えない。
実際、
ウエスタンダンサー、
アーバンストリート、
アーバニティは前述したレースで重賞初制覇を飾っていたが、
高松宮記念では
12着、
8着、
14着に敗れていたのだから、混戦状態にあると言って差し支えはないだろう。
そういった現在の芝スプリント路線の状況を表すかのように、
函館スプリントSの単勝オッズも割れ加減、しかも、
エムオーウイナー、
ブラックバースピン、
タニノマティーニ、
ウエスタンダンサー、
アーバンストリートという重賞勝ち馬を押し退け、重賞で連対のない
グランプリエンゼル、
エーシンエフダンズ、
マヤノツルギが上位3番人気までを占めた。
前日発売の段階では、
マヤノツルギが
1番人気に推されていたが、最終的には4.1倍で
グランプリエンゼルが
1番人気に落ち着いた。そのオッズから察するに、
新星の台頭を期待するというよりは、NHKマイルC3着、函館スプリントSに強い牝馬、51kgの軽量などが、人気を押し上げた主要因のように思えた。
ところが、51kgの軽量、ペースがそれほど上がらず(前半3F33秒8)、前残りの展開になったとはいえ、好位抜け出しで2着
タニノマティーニ以下に
1馬身半差をつけた。
古馬初対決、内枠で揉まれた時の心配などどこ吹く風といった感じで、完勝と言える内容だった。展開に恵まれただけでは、
NHKマイルCで
3着には食い込めないということか。
また、
橘S(京都芝1200m、OP特別)で
エイシンタイガー(CBC賞2着)を退けていたことからも、
グランプリエンゼルはやはり
芝のスプリント勝負こそが主戦場だったのだろう。1馬身半差、持ち時計を一気に2秒1も短縮したのがその証拠であり、
スプリント能力の高さを改めて浮き彫りにした結果となった。
グランプリエンゼルの展望は確かに広がった。今回のレース内容で、
1番人気に応えてきっちりと勝利した点も立派だと思う。だが、
タニノマティーニ(8番人気2着)、
ブラックバースピン(12番人気3着)、
シンボリウエスト(16番人気4着)が上位に残ったメンバー構成でもあったことは忘れてはならない。
また、厳しい言い方をすれば、
グランプリエンゼルはまだ日替わりヒーローの域を脱したわけではない。
サマースプリントシリーズと同様に、
「ROAD TO スリープレスナイト」の戦いは始まったばかりだ。
スリープレスナイトというピラミッドの頂に到達するには、さらなるスケールアップが必要となるだろう。それは、
432kgという小柄な馬体、
前半に少し行きたがる素振りを見せた気性など、
心身両面での成長という意味である。
ただ、
3歳という年齢、また、父は2~6歳時に5年連続で重賞を勝っていた
アグネスデジタル、母系は
サンデーサイレンス×ノーザンテースト×パーソロンという歴代のリーディングサイアーたちが名を連ね、活力を感じさせる配合なら、
成長力という点では心配無用か。
というわけで、
グランプリエンゼルが今後、どんな馬に育っていくのか、非常に興味が湧いてきた。なので、
1歳になった我が娘とともに、
グランプリエンゼルの成長にも期待を持って、親目線で見守っていこうと思います(笑)。