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ベテラン騎手のような騎乗ぶりには感心するばかり
文/編集部

ここ数ヶ月、三浦騎手に取材をする機会が何度かあった。20歳前とは思えないほど新人離れし、落ち着いたそのたたずまいは、昨年に驚異的な記録を残したことを、なるほどなと思わせるものだった。

また、これはすでに取材慣れしてしまっているせいもあるかもしれないが、こちらの質問に対する答えに迷いがない。ただそれは、何度も繰り返されてきたであろう質問にあらかじめ答えを用意していたというよりも、騎手としてナンバーワンになってやろう、常に上を目指そうという幼少の頃からの強い気持ちがあるから、発せられる言葉にもいつもブレがないのだろう。

今回の関屋記念勝利騎手インタビューの映像を観た方も多いとは思うが、それを観ても上記のような雰囲気は十分に伝わってきたのではないだろうか。昨年の函館2歳S以来ちょうど1年ぶりで、まだ2回目の重賞制覇だというのに、高まる興奮をもて余しているふうでもなく、終止落ち着いて受け答えしていた。

「折り合いの難しい馬だから、道中はそれをいちばんに気をつけて乗った」

この言葉は検量室前のインタビューでのものだったが、場内でのインタビューでは、自らその折り合いを「完璧」と言い切った。しかもスマイルジャックにはこれがテン乗りなのである。まるで当たり前のように、自分の成すべき仕事を忠実にこなした後のベテラン騎手のようではないか。

思えば、こういった新人離れした雰囲気というのは、武豊騎手がデビューした当初にもよく言われていたことである。いまの武豊騎手三浦騎手にとってはまだまだ雲の上の存在であるだろうし、技術的なことは比べようもないのだろうが、いずれ三浦騎手がいまの武豊騎手と同じような存在になるであろうことは、間違いのないことのように思える。

関屋記念では、そのふたりの天才騎手が1&2番人気を分け合い、結果的にワンツーフィニッシュとなった。ただし、着順と人気順は入れ替わっている。

武豊騎手騎乗の1番人気ヒカルオオゾラは、平均ペースの流れを後方4番手につけ、武豊騎手が懸命になだめるも、前走同様やはり掛かり気味だった。三浦騎手騎乗の2番人気スマイルジャックはそのすぐ前のポジション。どっしりと構え、「完璧」に折り合って追走した。

長い新潟の直線に向くと、ヒカルオオゾラは外めに進路を取る。武豊騎手は内が荒れた馬場状態のため、外に馬群が密集することを予測し、なるべく不利を受けない進路をすばやく確保したのではないだろうか。このあたりは、さすがとも思えた。

対してスマイルジャックは馬群のど真ん中を通る。下手をすると囲まれてしまいそうな位置にも見えたが、三浦騎手はゴールまでの進路がはっきり見えていたのだろう。慌てず騒がず落ち着いて馬群を割って抜け出した。

最後はヒカルオオゾラが道中に掛かっていたぶんだけ伸びを欠いた印象で、スマイルジャックが1馬身差をつけてゴールした。夏の新潟で競演したふたりの天才騎手の戦いは、今回は三浦騎手に軍配が上がった。

三浦騎手は、今年53勝目で、リーディングはこれまで10位前後を行ったり来たり。2年目の騎手としてはそれはもう立派な数字なのだが、大騒ぎされた昨年に比べると、今期はやや地味な印象でもある。本人も取材の際に、「騎手としていちばん大事なのは勝つこと」と言っていたし、いまの数字に満足はしていないのだろうが、ローカル開催で勝ち星を量産した昨年とは違い、今年は意識して中央場所で勝負しているようなので、特にあせりはないようだ。

気構えにブレがない三浦騎手にとって、1年ぶりの重賞制覇も特に意識することでもないだろうし、この勢いに乗って、ということもないのだろうが、こういう騎乗を観せられたほうとしては、やはりさらなる活躍を期待せずにはいられない。

三浦騎手にとって1年ぶりの重賞制覇は、スマイルジャックにとっては昨年3月のスプリングS以来、1年5ヶ月ぶりの重賞制覇にして、それ以来の勝ち星となった。ダービー2着という記録はあるものの、折り合い面に不安があるため、菊花賞後はマイル前後の距離を中心に使われていた。

それがようやく、この関屋記念で実ったかたちだが、今回はうまくいったものの、まだまだレースにいってみないとわからない部分はありそう。もっと上の舞台で活躍するためには、もう一段階の成長が必要のような気もするので、期待を込めて次走以降の走りに注目してみたい。


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