クイーンSはセオリーに従順になることがセオリー!?
文/編集部

00年以降、昨年は最多となる8頭の3歳馬が出走していたが、今年の
クイーンSに3歳馬の姿はなかった。
札幌記念には
牝馬二冠の
ブエナビスタが出走表明しているが、
桜花賞&オークス2&3着の
レッドディザイア&
ジェルミナルあたりが出走してくれば、興味は一層膨らんだのだが仕方がない。
単勝オッズは6番人気までが10倍を切る上位混戦模様だったが、
同年のヴィクトリアマイル最先着馬が3連勝中だったので(06年
デアリングハート、07年
アサヒライジング、08年
ヤマニンメルベイユ)、1番人気(3.4倍)が
ザレマ(
今年のヴィクトリアマイル4着でメンバー中最先着)に落ち着いたのは妥当に思えた。
「同年のヴィクトリアマイル最先着馬を中心視する」というのは、近年におけるセオリーと言えるだろう。また、00年以降について言えば、
「重賞連対実績馬が強い」(00年以降の連対馬18頭中15頭が該当)、
「4頭先頭の馬が勝ちやすい」(05年
スターリーヘヴン以外の勝ち馬が該当)というのが信頼を置きやすいセオリーだった。
ところが、今年の
クイーンSは出走馬14頭のうち、前走で3着以内に好走していたのは、条件戦で走っていた
アメジストリング(垂水S2着)だけ。前走で掲示板に載っていたとしても、
スペルバインド(博多S5着)が加わるだけ。その2頭以外の12頭は前走で6着以下に負けている。
馬券のセオリーはわりとはっきりしているクイーンSなのに、出走メンバーに変わり身待ちという馬があまりにも多すぎる。そういう状況の今年はおそらくレアケースなのだろうが、果たして例年通りにセオリーが通用するのか。半信半疑のまま、とんでもない結果になっても驚かない心の準備をして、レースを観ることにした。
結果は直線でラチ沿いから脚を伸ばした11番人気
ピエナビーナスが1着、好位からジワジワと差を詰めた1番人気
ザレマが2着、大外から急追してきた6番人気
アメジストリングが3着。桜花賞馬
レジネッタは後方ままで10着、昨年の秋華賞2着馬
ムードインディゴは大外からよく伸びてきたが4着まで。
2番手以下を引き離して逃げた
スペシャルフロートは14着に沈み、
「4頭先頭の馬が勝ちやすい」というセオリーは今年は通じなかった。ただ、
ザレマが2着に入ったので、同年のヴィクトリアマイル最先着馬が4連勝とはならなかったが、
「同年のヴィクトリアマイル最先着馬を中心視する」、
「重賞連対実績馬が強い」というセオリーは通用した。
ところが、1着
ピエナビーナスと3着
アメジストリングはどのセオリーにも該当していない。前述したように、今年がレアケースなのだとすれば、そういう馬が好走してしまうような特殊な状況だったのかもしれない。それにしたって、OPクラスでまったく実績がなく、格上挑戦だった2頭が、別定戦の重賞で揃って3着以内に入るとは。
確かに、00年以降では連対圏内をひと桁馬番の馬がずっと占めていて、開催9週目に行われた今年も例外ではなかった。
「ひと桁馬番の馬は評価を上げる」というセオリーを付け加えてもいいし、その意味では
ピエナビーナス(馬番3番)も
アメジストリング(馬番8番)も悪くはなかった。
しつこいようですが(笑)、でもですよ、
ピエナビーナスは
メンバー中最速の上がり(34秒9)をマークし、内枠からコースロスなく競馬ができたとはいえ、2着
ザレマに1馬身差をつけて突き抜けた。
アメジストリングも大外を回りながら、メンバー中3位の上がり(35秒1)で急追していた。
ピエナビーナスは人気薄だったし、鞍上の
古川騎手も気楽な立場で挑めたのが好結果に繋がった部分もあるかもしれない。また、
他の馬が思ったほど走れなかったから、という見方もできるだろう。それでも、決して展開や流れに恵まれたわけではなく、自分の力で重賞連対実績馬を押し退け、馬券圏内に食い込んでいるのだ。
とんでもない結果になっても驚かない心の準備はしていたが、とりわけ
ピエナビーナスの激走ぶりは想像の範疇を超えていた。野球では
「野球は何が起こるか分からない」とよく言われるけど、競馬もしかり、起きていることはすべて現実ということか。
ちなみに、
ピエナビーナスと
アメジストリングは札幌芝で勝利実績があったが、
札幌か函館の芝で勝利実績があった馬は、03年以降で見ると[4.6.6.21]という成績で、毎年2~3頭が3着以内に入っていたというデータもあったりしたんですよねえ。
来年の
クイーンSに向けて、そして、そのセオリーに気づきながらも、格上挑戦ということで、
ピエナビーナスと
アメジストリングを半信半疑の評価しかできなかった自分に対して、
「北海道の洋芝で勝利実績のある馬は“格上挑戦”であっても要注意」というセオリーは、しっかりと把握しておいたほうが良さそうです(笑)。