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短期集中型のレースぶりに大物の片鱗を見た思い
文/編集部

普段からコツコツと計画通りに物事を進め、予定通り仕事をきっちりこなすタイプと、普段はふらふらして一見不真面目にも見えるが、ここぞという時には集中して一気に仕事を片付けてしまうタイプ。言い換えると、普段から予習復習をしっかりこなして試験前も慌てないタイプと、試験前に徹夜で一気に詰め込むタイプ

人間はよくこのふたつのタイプに分けられるが、新潟2歳Sの勝ち馬シンメイフジのレースぶりを見て、そんなことが頭に浮かんでしまった。シンメイフジのレースぶりは、どちらかと言えば、後者のタイプのほうだろう。

前走のダリア賞のように大きく出遅れたわけではないが、スタート直後からフワフワした走りで後方の位置取りに。3、4コーナーでは最後方まで下がっていた。岩田騎手はもともと末脚を活かす競馬を考えていたようで、慌てる様子はなかったが、1番人気馬のレースぶりとしてはいささか不安ではあった。

そのままの位置取りで直線へ向かい大外に持ち出されると、そこからようやくエンジン全開。他馬を交わし去ると一気に先頭に踊り出た。しかし、短期集中型の常か、ここで“もう自分の仕事は終わり”とばかりに気を抜いてしまい、先頭に立ってからソラを使って真面目に走るのをやめてしまったように見えた。

岩田騎手によると、「観客のほうを見ていた」とのこと。2着フローライゼに危うく差し返えされそうになると、集中力を取り戻したようにもう一度グイッと出て、先頭でゴールイン。先ほどの後者のタイプは前者に比べて危なっかしい面もあるが、シンメイフジもそんな感じだった。トータル的に見れば、真面目にレースをしたのは正味、3、4ハロンくらいだったのではないだろうか。

ただ、こういったレースぶりだからこそ、まだまだ大きな可能性を感じさせられるし、秘めた能力は計り知れない部分もある。

今年の新潟2歳Sの出走メンバーは全体的にやや小粒な印象で、どの馬にもチャンスがあるように思えた。ゆえに今年は、のちに2歳王者になったマイネルレコルト(04年1着)、セイウンワンダー(08年1着)、2歳女王となったショウナンパントル(04年2着)のような大物の出現は期待できないのではないかと考えていた。

しかし、なかなかどうして、シンメイフジには今後の活躍も期待せずにはいられない。今回の出走メンバーの中では現時点の完成度というより、スケールの大きさで他馬を上回っていた。

また、父フジキセキのこれまでの牝馬の産駒のイメージともちょっと違う。父の産駒にはどちらかと言うと、軽快なスピードを武器にピリッとした小脚を使うタイプの産駒が多いような印象があるが、この馬のレーズぶりは豪快そのもの。コイウタエイジアンウインズといった父の牝馬の代表産駒とは、またひと味違った名馬に成長していくかもしれない。

ただ、この牝馬らしからぬどっしりとした気性はどこから来るのだろう。00年オークス4着馬である活躍馬の母レディミューズも、93年のマイルCSを勝った名牝である祖母シンコウラブリイも、どちらかと言うと、ピリピリした一面を持っていて難しいところがあった感じ。身体的な高い資質は受け継いでいるのだろうが、精神的な面はあまり似ていないように思える。

9月12日発売予定の『サラブレ10月号』で血統馬券の特集を組んでいる手前、あまりこういうことは言いたくないのだが(笑)、大物に育つような競走馬は、やはり字面のデータとはかけ離れた、どこか規格外なところがあるのかもしれない。

2着に入ったフローライゼニューイングランド産駒。父の産駒でOPクラスの活躍をしたのは、平地では昨年のラジオNIKKEI賞を勝ったレオマイスターくらいしかいなく、ほとんどの産駒は下級条件馬である。

ただ、フローライゼはスタートで後手を踏んでいまい、新馬戦を逃げ切った時とはまったく違う後方からの競馬を強いられながら、豪快な末脚であわやのシーンを作り、レオマイスターに続く重賞での連対を果たした。

3着に入った2番人気クロフォードには2馬身半差をつけているのだから、フローライゼも立派だろう。この馬も今後はこれまでの父の産駒とは違う規格外の活躍を見せてくれるかもしれない。

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