圧巻の電車道に今後目指すべき道筋が垣間見えた!?
文/編集部
土曜日の中山8R(3歳以上500万、芝1600m)は良馬場で勝ち時計が
1分33秒3。日曜日の中山の芝は、2R(2歳未勝利、芝1600m)こそ稍重で行なわれたが、5R(2歳新馬、芝1800m)から良馬場となり、9Rの
初風特別(3歳以上1000万、芝1200m)の勝ち時計が
1分7秒4。
京成杯AHは例年通り、
1分32秒台の高速決着が予想された。
結果はその通り、
ザレマがマークした勝ち時計は
1分32秒1だった。その時計はくしくも、昨年に
キストゥヘヴンがマークした勝ち時計と同じであり、
5歳牝馬が勝利を収めたという点でも、昨年と今年は共通していた。
だが、
キストゥヘヴンと
ザレマで決定的に異なることがある。それは、
キストゥヘヴンが
G1馬で、
ザレマが
重賞未勝利馬だったこと。それもひとつではあるが、
キストゥヘヴンは
京成杯AHを勝った時の馬体重が
434kgと小柄だったのに対し、
ザレマは
526kgという牝馬としてかなり大柄なことだ。
京成杯AHのレース直後、
「そんな大柄な牝馬が重賞を勝ったことなんてあったっけ?」という疑問が浮かんできたので、調べてみると、86年以降、500kg以上で重賞を勝ったケースは今回で
37回目だった。ただし、
520kg以上に限ると、
ニフティニース(91年・関屋記念、91年・セントウルS)、
サクラキャンドル(96年・府中牝馬S)、
ブラボーデイジー(09年・福島牝馬S)の4回しかなかった。
しかも、これまで牝馬の最高馬体重での重賞制覇は、91年・関屋記念の
ニフティニースの
524kg。
ザレマはその記録を2kg更新することとなった。
ザレマは前走の
クイーンSがデビュー以来でもっとも重い
538kgだったが、どうも太かったようで、今回は12kg絞ってレースを迎えることに。いや~、ギリギリセーフでした(笑)。
ギリギリセーフかどうかはさておき、
ダンスインザダーク牝馬はこれまで、
芝1600m重賞で[0.5.5.41]、
牡馬混合の芝重賞で[0.2.2.31]となっていたが、
京成杯AHで
ザレマがいずれも覆した。前記した馬体重の記録更新とともに、今回の
ザレマの勝利はいろいろと初物尽くしだったというわけだ。
重賞では[0.3.2.8]となかなか勝ち切れずにいた
ザレマが、牡馬相手の重賞で完勝し、重賞初制覇を挙げた。牝馬同士の重賞はペースが落ち着きやすく、それは
ダンスインザダーク牝馬が苦手にすることも少なくないが、
ザレマは牡馬相手で厳しい流れのほうが、パフォーマンスを上げられるタイプなのかもしれない。
だって、直線で内目から抜け出してきた時の
ザレマには、牝馬らしからぬというか、男勝りの迫力があったもの。鞍上の
内田博騎手の激しいアクションに応えて、グイグイと前の馬を交わしにかかる。レディーに対して失礼かもしれませんが、その時の
ザレマが、
元小結の小錦のがぶり寄りと重なって見えてしまって(笑)。
まさに圧巻の電車道。今回のレース内容は、
ザレマが今後目指すべき道筋をも示していたように思える。
ダンスインザダーク牝馬は芝G1で[0.3.2.40]となっていて、G1を制した馬はまだいないが、その壁に真っ向からぶち当たり、越えていってほしい。
一方、単勝2.0倍の断然の1番人気に支持されていた
ヒカルオオゾラは、直線で伸び切れず
9着に敗れた。道中では掛かり気味だったし、14kgの大幅な馬体減が影響した部分もあったのかもしれない。
[4.1.0.1]と安定していた
右回りの芝1600mで、
マイラーズC(
6着)に続いて崩れてしまったわけだが、開幕週で内ラチ沿いを通った馬が上位を占めた結果だけに、外枠がこたえた面も否定はできないだろう。
それにしても……重賞では
1、2、1、1、1番人気と期待を集めているだけに、取りこぼしたという印象は拭えないだろうか。リーディング争いで首位を走る父
マンハッタンカフェがタイトルを手中にするためには、
ヒカルオオゾラの飛躍も必要となってきそうなだけに、今後の奮起に期待したい。
負けることで得られる物があれば、勝つことでしか得られない物もある。高速決着の
京成杯AHが出走各馬に何をもたらしたのか。出走馬たちの次走以降が俄然注目となってきたが、それは秋競馬の開幕を飾る重賞として、立派に役目を果たしているのかもしれない。