マチカネニホンバレはまさに「あっぱれ!」という感じ
文/編集部

ストレートには滅法強くても、チェンジアップでタイミングを外されるとバットが空を切る。
メジャーリーグを観ていると、そんな光景を目にすることは珍しくない。球速の差はわずか10~20kmだろうが、
緩急をつけるのはピッチングの基本であり、バッターだってそんなことは百も承知だ。
競馬好きの脳みそと
野球好きの脳みそが融合するとそうなるのか、今回の
エルムSにおける
トランセンドを見ていたら、
「チェンジアップで空振り三振を喫したホームランバッター」というイメージが浮かんできた。
バットに当たればホームランとばかりに、ダートでは4戦4圧勝と負け知らず。
ウォータクティクスが
出走取消となったが、ダートの強豪古馬が揃う中、3歳馬
トランセンドは単勝1.6倍の断然の1番人気に推され、初の古馬相手でもホームランを期待されていた。ところが、道中はいつも通りに好位につけながら、直線では弾け切れず
4着となり、古馬3頭の後塵を拝する結果となった。
トランセンドが
1分49秒5のレコードタイムで駆け抜けた
レパードSと
麒麟山特別は、1000m通過がそれぞれ
59秒7、
59秒9、レースの上がり3Fはいずれも
37秒4だった。一方、
エルムSは1000m通過が
62秒6、レースの上がり3Fは
36秒0だった。
レパードSと
麒麟山特別より、1000m通過が3秒近く遅く、そこから芝並みの上がりを求められる展開。ダートで1勝目を挙げた時(阪神ダ1800m)は1000m通過が
62秒7、ダートで2勝目を挙げた時(京都ダ1800m)はレースの上がり3Fが
36秒2だから、経験したことのある流れではあった。
今回、
トランセンドがマークした上がり3F
36秒3は、自己ベストに0秒1差だから、
自分の脚は使っていると言えるだろう。ただし、今回の相手は同世代の条件馬ではなく、ダートの強豪古馬である。3歳馬
トランセンドと古馬との間に差があったとすれば、現時点では
ダートでの決め手ということになるかもしれない。
ストレート(
レパードSや
麒麟山特別のような速い流れ)なら、
エルムSでもホームランを打っていた可能性はあるだろう。それでも、今回はチェンジアップ(遅い流れ)で空振り三振を喫したとはいえ、上位2頭から0秒3差なのだから、
素晴らしい素質を持ったホームランバッターであることに変わりはない。
一方、ハナ差で
ネイキッドを凌ぎ、勝利を収めた
マチカネニホンバレは、前走の
しらかばS(10着)でダートでの連勝記録が
「5」でストップしたとはいえ、こちらも
素晴らしい素質を秘めたホームランバッターということを再認識させた。
5連勝の内訳は、
速い流れの東京ダ1600mで3連勝、
遅い流れの東京ダ2100mで差し切り勝ち、
速い流れの札幌ダ1700mでレコードで逃げ切り。スピード勝負に強さを見せつつも、レースの上がり3Fが35秒5だった
ブリリアントS(東京ダ2100m)において、
35秒2の上がりを使っていた。
高いレベルのストレートとチェンジアップでしっかりとホームランを放っている。その経験がエルムSでも活きたということだろう。また、直線で内から
ネイキッドに迫られながらも、ねじ伏せるようにして差し返した根性も素晴らしい。
張本勲氏に言わせれば、
「あっぱれ!」という感じでしょう(笑)。
マチカネニホンバレと同じ
4歳世代には、
サクセスブロッケン、
スマートファルコン、
カジノドライヴ、
エスポワールシチー、
ウォータクティクスといったダートの強豪がひしめいているが、
エルムSでも
クリールパッションが3着、
ナムラハンターが5着と好戦していて、層の厚さを感じさせる。
また、この日の阪神メイン・
エニフSでは
3歳馬の
グロリアスノアが完勝していて、
マチカネニホンバレが10着に負けた
しらかばSで勝利していたのも、
3歳馬の
エーシンモアオバーだった。
トランセンドを筆頭に、
3歳馬も負けず劣らず層が厚い。
今年のフェブラリーSでは、
4歳世代の
サクセスブロッケン(1着)、
カジノドライヴ(2着)、
エスポワールシチー(4着)が好走し、
世代交代と囁かれたが、
JCダートでは世代間抗争に一層、拍車がかかるかもしれない。