オールカマーで復活したマツリダゴッホ、マツリダゴッホで復活したオールカマー
文/編集部
今年の宝塚記念で06年の朝日杯FS以来となる、復活のG1勝ちを挙げた
ドリームジャーニー。昨年の宝塚記念でG1初勝利をマークし、今回はそれ以来約1年3ヵ月ぶりの復活を期す
エイシンデピュティ。立場が違う2頭の宝塚記念勝ち馬が出走した今年の
オールカマーだったが、この一戦で
「復活」の2字を色濃く刻んだのは、もう1頭のグランプリホース、有馬記念勝ち馬
マツリダゴッホだった。
復活した
マツリダゴッホは今年、4月の
大阪杯7着、8月の
札幌記念9着と、ここまで1着どころか掲示板に載ることもなく、今回の勝利は昨年のこのレース以来のものとなった。これで
オールカマー3連覇の偉業を達成。通算10勝目のうち、
中山では8勝目。
この競馬場では連対率75%、複勝率83.3%というこの巧者に、結果として
3番人気という評価は失礼ですらあったか。
そんな
マツリダゴッホと、1番人気
ドリームジャーニーの間に、人気で割って入ったのは上がり馬
シンゲンだった。
今年未勝利だった
マツリダゴッホとは対照的に、こちらは09年ここまで重賞の
新潟大賞典、
エプソムCを含む
3戦3勝。こちらは
東京で8戦6勝という他場の巧者で、
新潟1戦1勝も含め、広く直線の長い馬場を得意としている。
G1馬相手の中山戦は試金石だったと言える。
しかしレースは、鞍上
横山典弘騎手の
「スタートからやる気満々だった」という談話どおり、スタートから、そして最後まで
マツリダゴッホ一色の内容となった。大外15番から五分のスタートを切った
マツリダゴッホは、鞍上の手綱に応えて押して前へ。
「馬が反応しなかった」(横山典騎手)というスタート直後後方ままの
札幌記念とは打って変わって、自身初の逃げへと転じる。
「リラックスして走っていた」(横山典騎手)という道中、前半の1000m通過タイムはやや遅めの
61秒0。序盤3ハロン目の
12秒4からひとハロンごとに、
12秒3、
12秒3、
12秒2、
12秒1、
12秒0と、ほぼ0秒1ずつタイムを上げていく。これもこの日の好調ぶりを示す証拠だろう。4コーナーを回って最後は
11秒3、
11秒2、
11秒6の上がり3ハロンを
34秒1にまとめて悠々のゴール。
レース後、その手腕を誉めるインタビュアーに対し、
横山典弘騎手はまず、
「僕より3連覇したゴッホがすごい」と答えた。謙遜ではないのだろう。
「馬がよく知っていますよ、自分の勝負どころで自分でハミを取って走っていくし」など、前述してきたような感嘆の声が次々に溢れ出す。そしてその目は、いくつかの目標を視野に入れたかのように、遠くを見渡していた。
かつては6月の上旬に行なわれていた
宝塚記念が、96年、7月上旬に開催時期を移して以降(00年以降は6月最終週に固定)、時を同じくしてこの
オールカマーは、出走頭数がふた桁を割り込む、寂しいメンバー構成となることが多くなっていた。それは
宝塚記念の時期が後ろにずれた分、秋のG1シーズンに向け、復帰する時期も後ろにズレたからだと推察される。
それがここ5年は、ふた桁頭数を維持しているどころか、
10、15、16、14、15頭と、再び盛況に。さらに今年は
3世代のグランプリホースと、
現在の芝路線最有力上がり馬が出走。レース名に残る理念、
地方馬や
海外馬、
アングロアラブの出走機会こそほぼ消滅してしまったものの、量・質ともに、かつて存在した
お祭り競走としての色合いは復活しつつある。
つまり今年、
「復活」がテーマとなっていたのは、何もグランプリホース3頭だけではないのだ。
オールカマーもまた、レースとして
「復活」。そしてこの復活には、
マツリダゴッホの存在も大きく寄与しているように思う。同馬は07年にこのレースを経て、
有馬記念を制しG1馬となった。このレースそのものが目標となるG2ではない。
先のG1へとつながるG2へと
オールカマーを変えたのは、紛れもなくこの
マツリダゴッホだ。