「朝食」で、またもちゃぶ台がひっくり返された
文/編集部
「朝食」は英語では
「Breakfast」。これは、
「break(破る)」と
「fast(断食)」を合わせた言葉と言われていて、つまり、
寝ている間は食事を取らない=断食で、それを破る食事が朝食だから、このように付けられたとか。
今回の
神戸新聞杯は、戦前、
「Breakfast」のようなレースだなあ、と思っていた。
どういうことかと言うと、
休み明けの馬が多く、その休養期間が
睡眠時間=断食中のように感じられて、休み明けでいきなり走れる馬、すなわち、
目覚めてすぐに食事をガツガツ食べられるような馬は何かを当てるレースだなあと思ったのだ。
これが歴戦の古馬の戦いなら、各馬とも休み明けでの出走歴があるだろうから、予想もしやすいところだろうが、今回は
休み明けでの出走が初めてという馬も多かった。そこで、父の血統を元に考えてみることにした。
まず、1番人気の
アンライバルドは
ネオユニヴァース産駒で、
同産駒は休み明けでの芝が[7.7.7.41](勝率11.3%)だった。
ロジユニヴァースが休み明けで重賞を3勝していて、朝からかなりガツガツ食べられそうだ。
ロジユニヴァースが朝から食べられるタイプなだけ、との予測もできたが、ここで
アンライバルドの評価を無理に下げる気は起こらなかった。
2番人気に推された
アントニオバローズは、初勝利を挙げた時が
休み明け(4ヶ月半ぶり)だったが、同じく
休み明け(3ヶ月ぶり)だった
皐月賞は
9着に敗れている。
これは判断が迷うところ。ただ、
マンハッタンカフェ産駒は休み明けでの芝のOPクラスが[0.1.2.21]という成績。
軽食は食べられても、重い食事は朝からは結構です、というタイプに思えた。
3番人気の
リーチザクラウンは、休み明けでの出走が今回が初。
スペシャルウィーク産駒は休み明けでの芝のOPクラスが[4.2.3.43](勝率7.7%)という成績だった。
まずまずとは言えるものの、4勝中3勝は
13頭立て以下で挙げている。
14頭立て以上に限ると[1.2.0.33]で、
リーチザクラウンが逃げ脚質であることを加味すると、頭数が多いのは気になってくる。
スペシャルウィーク産駒も、
朝からは多くの量は食べきれないタイプではないか。このことは、同父の
トライアンフマーチにも感じられた。
セイウンワンダーは
昨年の朝日杯FSを制した時が
3ヶ月半の休み明けで、すでにポン駆けの実績がある。ただ、同馬はその勝利の後は未勝利で、3勝はマイル戦となっている。
同父系(父ロベルト系)の
アプレザンレーヴは、今回が初の休み明けで、馬体重が
24kg増(554kg)だった。
シンボリクリスエス産駒は、牡駒に限ると休み明けでの芝が準OP以上で[0.2.0.13]。
そもそも
ロベルト系には叩き良化型が多く、例えるなら
「朝食は抜きで、昼飯、夕飯と食べる量が増えていき、深夜のラーメンも軽く平らげるタイプ」が多く感じられる。
アプレザンレーヴは、今回は割り引きだろうと思われた。
こうして導き出した結論としては、おそらく逃げるであろう
リーチザクラウンがどこまで粘れるかで、それを倒すのは
ネオユニヴァース産駒の
アンライバルド(もしかしたら同父の
レッドシャガーラかも)、というものだった。
その予測通りの形で最後の直線に向き、かなり力が入ったものの、
レッドシャガーラは失速し、
アンライバルドも伸びかけながらワンパンチが利かなかった。
そして、その外から物凄い脚で伸びてきたのが、軽食しか食べられないと思われた
マンハッタンカフェ産駒の
イコピコだった。
462kgと出走馬14頭の中で3番目に小さな体だった
イコピコは、小兵だけに仕上がりも万全だったか、真一文字に突き抜けた。その上がり3Fは
33秒7。
昨年優勝の
ディープスカイが
35秒1、一昨年の
ドリームジャーニーが
34秒5だったのだから、今回の
イコピコがいかに斬れたかがよく分かるだろう。
イコピコは穴ぐさ💨で、その推奨理由には
「母父ジェイドロバリーは休み明けを苦にしないタイプが多い」と記されていた。父親だけで
「朝食を食べられる・食べられない」を判断してしまってはいけなかったのかもしれない。
皐月賞の1~4着馬、
ダービーの2・3・5着馬が出走した今回の
神戸新聞杯は、堅い決着になると予想した人も多かったと思われるが、またも一波乱が起こった。
皐月賞も
ダービーも一筋縄で収まらなかったが、今回もまたもちゃぶ台をひっくり返されたような印象を持った人が多いことだろう。
しかし、今回はあくまで
「朝食」とも言える。この先の
メインディナーを食すのは、どの馬かまだ分からない。はっきりしたのは、
メインディナーを食べるだけの能力を持つ馬が、予想以上に多そうということだ。