兄を倒しただけでなく、父系から考えても非常に価値ある勝利
文/編集部

今年の
シリウスSは、戦前から
「ワンダースピード&ワンダーアキュートの兄弟対決」が話題となっていたが、1番人気の兄
ワンダースピードが中団ぐらいからの競馬となって5着で終わる一方、3番人気の弟
ワンダーアキュートは先行して3馬身突き放す楽勝劇という、あまりにも鮮やかな
「兄超え」の結末となった。
兄
ワンダースピードは、7歳の現在では
重賞4勝馬だが、重賞を初めて制したのは
6歳春(08年4月)での
アンタレスS。それに比べて弟
ワンダーアキュートは
3歳秋で重賞初制覇だから、そういった意味でも
大幅に「兄超え」を果たしたと言えるだろう。
現3歳世代は古馬混合の重賞で、
ラヴェリータが7月に川崎の交流重賞・
スパーキングレディーC(ダート1600m)を勝ち、
グランプリエンゼルも7月に
函館スプリントS(札幌芝1200m)を制しているが、
ワンダーアキュートはJRAの古馬混合のダート重賞における現3歳の初勝利。
現3歳の牡馬で初めて古馬混合の重賞を勝った馬、ということにもなる。
そういった面から、
ワンダーアキュートは
現時点ですでに兄以上の実績も残しているとは言えるが、真の意味での
「兄超え」が達成されるためには、やはり
兄以上の重賞勝利数だったり、
兄が現時点で成し遂げられていないG1勝利が欲しいところだろう。
シリウスSと言えば、07年にも3歳の
ドラゴンファイヤーが勝っているが、他のレースも含めて
「JRAの古馬混合のダート重賞を制した3歳馬」は、その後、どのような成績を残しているのだろうか。
90年以降、JRAの古馬混合のダート重賞を3歳時点で制した馬は、
シリウスSの
ワンダーアキュートで
21頭目。それらの馬たちについて、まず単純に次走成績を見てみると
[6.1.3.9]で、6頭が次走でも重賞を制している。
勝率31.6%、連対率36.8%、複勝率52.6%だから、好走率としても上々といった感じだ。
この次走成績([6.1.3.9])については、父系での血統別成績で見ると、さらに興味深いものとなる。
父ノーザンダンサー系が
[4.1.0.2]と突出した成績で、その他の父系は
[2.0.3.7]。その他の父系で次走に連対したのは、
ストーンステッパー(父クラフティプロスペクター)と
カネヒキリ(父フジキセキ)という、後にG1のフェブラリーSで連対した2頭しかいない。
父ノーザンダンサー系の
[4.1.0.2]という成績の中で、1着に来た4頭の名前を挙げると、
ナリタハヤブサ、
ライブリマウント、
トーヨーシアトル、
クロフネとなる。オールド・ファンなら現役時代の勇姿を思い出されるかもしれないが、
帝王賞、
東京大賞典、
ジャパンカップダートなど、ダートの大レースを制した強豪たちが顔を連ねている。
ちなみに、
父ノーザンダンサー系の
[4.1.0.2]で馬券圏外だった2頭も、
トーヨーレインボーはその次走で芝重賞の
中京記念を勝っているし、
サンライズバッカスは2年後にG1の
フェブラリーSを制した。
これだけのそうそうたる戦績の馬が並んでいるということは、要するにおそらく、
「サンデー系やミスプロ系などの仕上がりが早い血統に比べれば、ノーザンダンサー系は基本的に開花が遅めなだけに、3歳時点で古馬相手のダート重賞を制することは、非常に高いポテンシャルの証明となる」という面があるのだろう。
ワンダーアキュートは、父が
ノーザンダンサー系の
カリズマティック。もう少し細かな小系統で言えば、先述の
サンライズバッカス(父ヘネシー)と同じ
ストームバード系になる。
この父系から言っても、そして
「兄ワンダースピードは6~7歳時(09年10月4日時点)に重賞を4勝」という母系から考えても、
ワンダーアキュートの今後は、かなり有望そうだと言ってもいいだろう。
この後の目標はおそらく
ジャパンカップダートだと思われ、そこでは今回以上の強敵が待ち受けているだろうが、
「3歳時点で古馬混合のダート重賞を制した父ノーザンダンサー系の底力」を得意の阪神で発揮して、今回以上のあっと驚くレースぶりを見せてくれることを、今から楽しみにして待つことにしたい。