決して贔屓目ではなく、父グレイソヴリン系の2頭の未来は明るい
文/編集部
テイエムプリキュアが大逃げを打ち、離れた2番手で追いかける
クィーンスプマンテ、3番手
コスモプラチナ以下はそこからさらに大きく離れて追走する。1000m通過は
59秒1。そのため、レースの上がり3Fは
37秒1と時計を要した。レースの上がり3Fが35秒以上かかったのは14年ぶり、37秒以上かかったのは22年ぶりだった。
レースの上がりが速くなりやすい
京都大賞典としては、
異例とも言える展開だった。ただ、1着
オウケンブルースリは
上がり34秒1(メンバー中2位)、2着
スマートギアは
上がり33秒8(メンバー中1位)をマークしていたことからも、大きく離れて追走していた3番手以下のグループにとっては
スローペースだったのだろう。
それにしても、前が飛ばすトリッキーな展開の中、自分の競馬に徹し、しっかりと末脚を伸ばした
オウケンブルースリは素晴らしい。思えば、優勝した
菊花賞もトリッキーな展開だったが(
前半1000m58秒8、中間1000m66秒7、後半1000m60秒2)、その経験がモノを言った部分もあったのかもしれない。
昨年の菊花賞以前では、フォルティノ系を除いた父グレイソヴリン系で京都芝G1を勝っているのは、94年のマイルCSを制したノースフライト(父トニービン)だけで、菊花賞に限れば連対馬はいなかった。
ダービー馬の
ウイニングチケットや
ジャングルポケットをもってしても、その壁を突き破れずにいたのだが、ご承知の通り、
オウケンブルースリはその難関データを覆して菊花賞制覇を成し遂げていた。
そして、今回の
京都大賞典の
『メインレースの考え方』でも、
オウケンブルースリについて
「父グレイソヴリン系は京都芝2400mの重賞で[1.3.5.24]、血統面での逆風を跳ね返せるかもポイントになってきそう」と記したが、菊花賞に続いてのマイナスデータ打破である。
オウケンブルースリをはじめ、今年の
京都大賞典に4頭もの産駒を送り出した
ジャングルポケットもすごいと思うが(しかも、3着
トーセンキャプテン、4着
ジャガーメイルで4頭中3頭が掲示板確保)、
オウケンブルースリは
父グレイソヴリン系の異端児。もはやそう言っても過言ではないだろう。
ちなみに、父グレイソヴリン系全体で京都芝G1&G2で3勝している馬はいないが、2勝しているのは
オウケンブルースリ以外だと、
ビワハヤヒデ(92年デイリー杯3歳S、93年菊花賞)、
ナリタセンチュリー(04年京都大賞典、05年京都記念)がいる。ただし、G1とG2で1勝ずつとすれば、
オウケンブルースリと
ビワハヤヒデだけ。
ビワハヤヒデは
阪神で行なわれた
京都記念(94年)や
天皇賞・春(94年)を勝っていたので、通常開催であれば、京都芝G1&G2で4勝していた計算になるが、いずれにしても、データ上では、
オウケンブルースリは
G1・3勝馬の
ビワハヤヒデに肩を並べたことになる。
オウケンブルースリはこの後、秋のG1戦線に乗り込んでいくことになると思うが、
その先も含めて、かなり楽しみな存在になったと言えるだろう。まあ、
昨年のジャパンC(5着)ではディープスカイ、ウオッカ、マツリダゴッホと小差で走っていたのだから、潜在能力の高さはすでに示していたという話もありますけど(笑)。
一方、同じ
ジャングルポケット産駒の
ジャガーメイルは、重賞未勝利ながら
1番人気に支持されたものの、差し届かず
4着。手綱を取った
石橋脩騎手ともども、重賞初制覇は次走以降に持ち越しとなってしまったが、こちらは
その父にしてこの子ありというか、
東京芝2400~2500mでは[3.2.0.0]となっている。
ジャガーメイルは、
右回りの芝では
未勝利と
500万で勝ってはいるが、
香港ヴァーズ3着、
天皇賞・春5着、そして
今回の京都大賞典が4着と、重賞では連対できていない。現状では
左回り>右回りということだろう。舞台を
東京に移せば、待望の重賞タイトルに手が届いてもおかしくなさそう。
同じ
父グレイソヴリン系でも、
オウケンブルースリと
ジャガーメイルとで、明暗が分かれる結果となったことが印象的な
京都大賞典だったが、
2頭の未来は明るいと思っている。それは決して、
父グレイソヴリン系を愛する男の贔屓目ではないはずだ。