父譲りの瞬発力を披露した鬼脚コンビの今後に期待
文/編集部

昨年リーディングサイアーとなり、今後の活躍が期待された
アグネスタキオン。しかし、その
アグネスタキオンは今年の6月22日に夭逝してしまった。父の死にショックを受けたわけではないだろうが、
今年のアグネスタキオン産駒はここまで昨年ほどの成績を残せていない印象がある。とはいえ、
マンハッタンカフェについで
2位につけているわけだが(10月11日現在)。
特に06年、07年に首位に立っている2歳戦の成績がふるわず、10月11日現在で
9位となっている。デイリー杯2歳S以前に行われた4つの2歳重賞でも連対馬もおらず、さらに
野路菊Sを勝ち、唯一2勝を挙げた
リルダヴァルも
故障で戦線を離脱してしまった。
そして迎えたこのレースでは、
新潟2歳S2着と実績上位の
フローライゼを抑えて、奇しくも
アグネスタキオン産駒の
リディルと
ダノンパッションが
1、2番人気に推された。
朝日CCで
キャプテントゥーレ、
ローズSで
ブロードストリートと、産駒が重賞を制して勢いが出てきた父に2歳戦線からも孝行息子誕生となるだろうか。
レースはいきなりスタートで2番人気の
ダノンパッションが出遅れて最後方から、
リディルも中団やや後方の内につける。逃げたのは
クリノキングビートで2番手に
エイシンアポロン。3番人気の
フローライゼは中団につけた。
流れは前半こそ速かったが、中盤でペースは緩んだため馬群はさほどバラけず。3コーナーを過ぎたあたりから、後方集団が徐々に前へと進出し始め、一気にペースアップする。このあたりで道中は内につけていた
リディルは外へと出していく。そのスペースをつくように
ダノンパッションは内を突く。
直線に入ると馬場の真ん中から
エイシンアポロンが先頭を窺う。そこを最内から
ダノンパッションが伸びてくる。この2頭の争いになるかと思われたが、大外から
リディルが急襲。まさに目の覚めるような末脚で、粘る
エイシンアポロンをゴール前クビ差交わして差し切った。2着
エイシンアポロン、3着に
ダノンパッションが入った。
先行した
エイシンアポロンが2着、
ダイワバーバリアンが4着、
ラブグランデーが5着に残るという先行有利の流れの中、勝った
リディルは
大外を回すというロスがありながら、強烈な末脚でそれらを一蹴。
父アグネスタキオン産駒らしい斬れ味を披露して見事人気に応えてみせた。パドックでは馬っ気を出したりするなど、まだまだ気性面では幼いところがあるが、この瞬発力は本物だ。
また、3着に入った
ダノンパッションも、勝った
リディルと同じ
上がり3F33秒8の末脚を繰り出している。
マイナス12kgという馬体減や
スタートでの出遅れなど、敗因もいくつか考えられる中でのこの走りは評価したい。
ともに
父アグネスタキオン譲りの瞬発力を披露した
リディルと
ダノンパッション。この鬼脚コンビがこの後の2歳戦、そして来年のクラシックを大いに盛り上げてくれることは間違いないだろう。
2着に入った
エイシンアポロンは前走の
野路菊Sでは後方から進んで伸びを欠いたが、今回は未勝利勝ちと同様に積極策で2着を死守。
父Giant's Causeway、母父Sadler's Wellsという血統。
母父Sadler's Wellsということからも、先行して押し切る今回のようなレースが合っていそうだ。