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彼女を追いかけて泣いた男は数知れず
文/山河拓也

 何はともあれ、めでたい第1回。ってことは、過去データに頼った予想も不可能ってことだ。どうすりゃいいのか。

 まず、未来の傾向を想像して、それに当てはまるような結果を予想すればいい。過去から未来を見つめるのではなく、遠い未来から近い未来を見つめるのだ。

 未来には、牝馬の競走寿命もまだ延びるだろう。第10回ヴィクトリアマイルになると5世代の桜花賞馬が揃い踏みなんて決戦が見られるかも。G1の数もまだまだ増えるだろう。歴史と伝統の第20回ヴィクトリアマイルともなれば出走18頭すべてG1ホースなんて大決戦が見られるかも。

 そうすると、このG1で勝ち負けに持ち込むのも当然G1ホース、となる。きっと第1回から、その傾向が現れる、と考えた。考えて、そんな低配当の馬券が買えるかよ、と打ち消した。やり直し。そうか、あるぞ、過去の傾向。このレースを京王杯SC(牝)距離変更と考えることにした。

 京王杯SCに実績のある牝馬といえば、2勝を挙げたスティンガーだ。もう現役にいないよ、そんな馬と言うなかれ。いるじゃないか、妙に藤澤和厩舎の悪女キャラが重なるダンスインザムードが。と考えて、彼女を1着固定の3連単を買って、2着も3着もヌケたのだった。

 人気でコケてコケて、人気を落とした秋天で爆発。彼女を追いかけて追いかけて、やめた途端に激走されて泣いた男は数知れず。おそらく今回は2年ぶりのG1制覇よりもジョッキー8年目の初制覇が熱く報じられるだろうが、つかみどころのない悪女キャラだけに、それも仕方ないか。

 エアデジャヴーは、やたらと2着3着の多い、以前どこかで見たことがあるような戦績の馬だった。名が体を表す、じゃなくて名が競走成績を表す馬だった。その娘エアメサイアも同じ道を歩きかけて、昨秋に吹っ切れたと思ったら、また逆戻り。今後の奮起に期待したい、ノーモア既視感

 昨年変則二冠と賞されたラインクラフト。ここも勝てば変則三冠というか、新設レースだけにほとんど反則三冠という気もしたが、9着。悪路を通勤に急ぐOLが玄関(スタート)で足を何かに引っかけて、足に泥がハネるのを気にして、ついには伝線が広がり破れていった。

 って、そりゃパンスト三冠。とまあ、くだらんことを言いたくなる、リズムを崩した敗戦だった。

 何はともあれ、めでたい第1回。未来に第1回から全部リアルタイムで観てるぞと、ガンガン自慢していただきたい。筆者は第1回から全部馬券を獲ってるぞと自慢する権利をさっそく失った。

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