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逞しい肉体から生み出されるスピードとパワーが日本馬を蹴散らした
取材・文/棚井伸一郎

「上手く捌けず、脚を余してしまったな。いい伸び脚をみせていただけに残念だが、いっしょに競馬をして感じていたように、やはり力があるんだ」

本誌『サラブレ』の“M・キネーンのズバリ言う”の取材において、昨年の安田記念を見たキネーンは、“香港の英雄”と言われたサイレントウィットネスからコンマ2秒差の4着だったブリッシュラックの走りをそう評した。

あれから1年。今度は香港のマイル王として堂々の再来日を果たした。2枠4番という絶好の枠を引き当て、好スタートを決めると昨年からは一転、内々の中団にポジションを取り、直線で外から一気に抜け出し、ディフェンディングチャンピオン・アサクサデンエンの追撃を退け、見事に雪辱を果たしたのだ。

そのレースぶりは、とても意欲的に映り、“絶対に同じ轍は踏まない”という意志を強く感じさせられた。

その香港のマイル王に対して、実はレース前、500キロを超える馬体から「素軽さがない」など、日本の馬場への適性を疑問視する関係者の声が聞かれていたのである。

実際、勝った直後の検量室前を引かれるブリッシュラックの姿を、多くの日本人関係者たちは「強い」と認めるつつ、興味深く洞察していた。

「確かにトモの蹴りなどは日本の馬よりも力強い。ただ、骨格もそうだけど、筋肉が逞しいという以上に、重苦しい印象を受ける。よくこれでスピード競馬に対応できるよなぁ。日本ならダート馬と認識を持たれかねない」

関係者たちはそういった同じ類の感想を口にしていた。

逞しい肉体から生み出されるスピードパワーが日本馬を蹴散らした。

マイル戦線を牽引してきたデュランダルが昨年引退し、“絶対的な存在がいない”と言われ続けていた日本のマイル戦線。

昨年は春秋のマイルG1で勝ち馬が変わり、今年は香港馬に屈する結果となった。

果たして、そのレベルはどうなのか。また今年の夏、M・キネーンにその印象を聞くことを楽しみにしたい。

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