アドマイヤムーンの「ケタ外れの瞬発力」は神がかり
「ケタ外れの瞬発力」3歳馬
アドマイヤムーンが歴戦の古馬たちを、直線大外一気で一蹴した鬼脚。上がり3Fはなんと
33秒5を計時した。1頭だけが倍速モードで動いているかのように、何かが乗り移ったかのように、内の古馬たちは止まって見えた。
前半1000m通過61秒2は過去10年でもっともスローペースだったとはいえ、レースの上がりは
34秒3。この数字自体、
札幌の洋芝ではそうそうお目にはかかれない代物だ。
ではここで、過去10年の札幌記念における、前半1000mの通過タイム、レースの上がり3F、そのラップを並べてみる。
●96年マーベラスサンデー(優勝馬)
61秒1(前半1000m通過)
35秒9(上がり3ハロン)
12.0-12.1-11.8(ラップ)
●97年エアグルーヴ
59秒6
36秒1
12.2-12.0-11.9
●98年エアグルーヴ
59秒9
35秒9
11.9-12.1-11.9
●99年セイウンスカイ
59秒9
36秒0
12.0-11.9-12.1
●00年ダイワカーリアン
60秒2
35秒6
11.7-11.8-12.1
●01年エアエミネム
61秒0
34秒7
11.6-11.4-11.7
●02年テイエムオーシャン
59秒5
35秒4
11.9-11.9-11.6
●03年サクラプレジデント
60秒8
35秒1
11.7-11.7-11.7
●04年ファインモーション
59秒9
36秒1
11.7-11.8-12.6
●05年ヘヴンリーロマンス
60秒5
36秒7
11.9-12.0-12.8
今年の上がり3Fのラップは
11.6-11.4-11.3。ここでアドマイヤムーンの
「ケタ外れの瞬発力」が浮き彫りとなる。
残り1ハロンで計時した
11秒3という数字。
過去10年どころか、
第1回の札幌記念まで遡っても、
11秒3なんていうラップは、ただの一度も計時されたことはない。
33秒5という上がり3Fのタイムも同じく、札幌記念で最速である。
極限の瞬発力勝負となった札幌記念を、
「ケタ外れの瞬発力」でもって制した
アドマイヤムーン。
3歳馬が古馬を圧倒。
今年の3歳トップクラスは高レベル。
武豊騎手が札幌記念7勝目。そういった文面が、明日のスポーツ新聞、競馬週刊誌を賑わせるだろうが、衝撃の事実は数字に裏打ちされた瞬発力であることを強調したい。
アドマイヤムーン自体については、皐月賞4着、ダービー7着と春G1では不本意な結果に終わっていたが、成長の証はレースぶりにも見られた。馬体こそ8キロ減であったものの、2歳時の札幌で見せていたような
内にササる癖は完全に影を潜めていた。
若さが解消し、真っ直ぐ走れるようになったからこそ、あの
爆発的な鬼脚が引き出された要因でもあるだろう。
先週は、
ベガ、
ラインクラフトという名牝が急逝するという悲報が相次いだ。
ベガは、アドマイヤムーンを管理する
松田博資厩舎ゆかりの馬だった。
ラインクラフトは、アドマイヤムーンと同じく
エンドスウィープ産駒だった。
ベガとラインクラフトが、アドマイヤムーンを後押ししてくれた。そう考えるのは非現実的であることはわかっている。だが、そうも考えたくなるほど、アドマイヤムーンの鬼脚は神がかっていた。今年の札幌記念は忘れられない。