北海道発!! ナムラマースのシンデレラストーリー
ナムラマースのデビュー戦は
函館開幕週(6月18日)の芝1200m。話題の中心は、大物と噂されていた外国産馬
コンゴウダイオーがどういった走りを見せるのか。その一点だったといっても過言ではなかった。
その中で、
ナムラマースはブービー人気の8番人気。結果も、勝ち馬
エーシンダームスンから
1秒6差も離された
5着に終わった。
正直、レース前は完全にノーマークだったし、どんな走りをしていたか、ほとんど記憶がない。ただ、父
チーフベアハート、母父
フレンチグローリーという血統。
「ノーザンダンサーの4×4というクロスの持ち主」だと認識したことは覚えている。
二冠馬
メイショウサムソンは父
オペラハウス、母父
ダンシングブレーヴ。
ノーザンダンサーの3×4というクロスを持っている。
ラムタラ(ノーザンダンサーの2×4)や
メジロブライト(ノーザンダンサーの4×4)が現役だった頃は衝撃的だったが、いまではちっとも珍しくもないクロスだ。
血統的なとっかかりに始まった
ナムラマース。その後は
「未勝利の芝1200mで堅実に走る馬」という認識に変わっていく。函館芝1200mの未勝利で3戦連続の2着。
先行して安定感があるといえば聞こえはいいが、要は
決め手に欠けるということ。
函館開催を終えた段階で、4戦2着3回。
「札幌2歳Sとは無縁の存在」と意識することすらなかった。
それが、どうだ。札幌に移り、距離を
1800mに延ばした途端、未勝利で
5馬身差の圧勝。まるで別馬だ。
ナムラマースを見続けた人間にとっては、とてもじゃないが、同じ馬とは信じられなかっただろう。
2歳馬に限った話ではないだろうが、馬は
きっかけひとつで変貌する。その瞬間を目の当たりにした。
次走の
コスモス賞(札幌芝1800m)でも驚きは続く。
1分48秒4のレコードでまたまた圧勝。馬場の比較がつきにくいとはいえ、のちのダービー馬
ジャングルポケットがマークしたレコードを、
1秒2も上回るタイムで好走するのだから。もはや、驚きを通り越して感嘆の域に達した。
ナムラマースに対する認識は
「札幌2歳Sの最有力馬」に早変わり。
そして、
札幌2歳S。
イクスキューズと人気を二分するかたちになったが、堂々の1番人気に推された。
前半1000m通過が
61秒9とそれほど速くなかったため、少々折り合いを欠き気味。外目の枠ということもあり、終始、外、外を通ることに。これは恐れていた不安要素だったが、4コーナーで一瞬置かれかけた時には、負けを覚悟した。
ところが、直線で一完歩ごとに前との差を詰め、メンバー中上がり最速の
35秒1の脚を繰り出して差し切り。2着
アドマイヤヘッドとの差はわずか半馬身だったが、外を通ったロスを考えれば、
着差以上の完勝だったと言えるだろう。
過去の
札幌2歳Sでは、
ジャングルポケット(00年)や
アドマイヤムーン(05年)が、2着馬に
1馬身半差をつけ、大外から派手な差し切りを決めていた。誰の目にも、その馬の強さを感じることができる、クラシックを強く意識させるパフォーマンスで。
ナムラマースは、同じ外からの差し切りでも、どちらかといえば、
見た目も
着差も地味。だが、強いことは間違いない。地味な強さがかえって不気味。
キャリア7戦という叩き上げで、同じ
ノーザンダンサーのクロス馬ということもあるが、どことなく、
メイショウサムソンに似た雰囲気を感じる。
ナムラマースは年内を休養に充てるそうだが、札幌2歳Sを終えた時点での認識は
「クラシック候補生」。
北海道開催の間だけで、これだけ評価が様変わりし、これだけ株が急上昇した2歳馬というのもあまり記憶がない。
メイショウサムソンの時も、馬の急激なレベルアップに、こちらの認識が追いつかなかった。もうこれ以上、そして、
ナムラマースについても、同じ轍を踏むのは避けたいものだ。