バタバタした状況の中で魅せた、ベテランならではの自然体の勝利
取材・文/長岡伸治
「悠仁親王殿下御誕生慶祝」と銘打たれた第134回天皇賞・秋。今年はとにかくバタバタした天皇賞だった。
先週までは、天皇賞の話題よりも
ディープインパクトの
「与えた、与えてない」、そして
「出る、いや出ない」の方に関心が集まっていた。
結局、出なかったわけだが、そのあおりを喰って、路線変更する馬や、回避する陣営があったりした結果、故障馬もあってフルゲート割れの17頭。
前日には、
小牧騎手がレース後に馬に蹴られて負傷し、
ローゼンクロイツが
後藤騎手に変更。
当日も、午前中のレースで
藤田騎手が落馬負傷、
アサクサデンエンが
田中勝騎手へと乗り替わりになった。
そして、挙句の果てには馬場入場後、
トリリオンカットが放馬し、
競走除外になるというアクシデントまで……。
ここまで来ると、何か波乱が起きないほうがおかしい。オッズも、単勝万馬券がひとつもないなど、かつてないほどの割れ加減を示す。
しかし、そんな中でも勝者は落ち着いていた。
レースを引っ張ったのは
インティライミ。1000m通過の
58秒8は、
やや速い平均ペースといったところか。
ダイワメジャーはスタート直後に軽くおっつけて2番手を確保すると、スムースに流れに乗った。
こうなれば、簡単にはバテない。
直線、坂下から追い出され、G1の2着は指定席になっている
横山典騎手の
スウィフトカレントの猛追も寄せ付けず押し切った。
安藤騎手は、勝利インタビューでも
「この馬向きの流れになった」ということを再三強調していた。
こんな混戦のメンバーのG1に人気馬での参戦。当然
「無欲」ではいられないだろう。
でも、そのガッツキたくなる気持ちを自分の中で上手に溶かす。
ベテランならではの自然体の勝利とでも言おうか、そんな安藤騎手の冷静な手綱さばきに見えた。
天皇賞を終えた
最終レース。先に行なわれる京都の最終レースが、
枠入りのトラブルで発走がずれ込んでしまった。
そうこうしているうちに、東京では出走馬が馬場へ。しかし、場内放送は京都の実況音声を流しているため、
アナウンスなしでの本馬場入場という事態に。
なんだか、最後までバタついた天皇賞デーだった。