着差はわずかも、内容的には力の差が歴然としていた
父は470キロ台ながら、胴が長く流線型のスラッとした馬体。
息子はガッチリとした筋肉質で、508キロという雄大な馬体。
父
ジャングルポケット、息子
フサイチホウオーは
馬体の比較ではまったくの別馬。
父は
共同通信杯(東京芝1800)で直線でムチが入ると内にササりながら、あっという間に突き抜けた。遊びながら走って、まったくの完勝。
息子は
新馬戦(東京芝1800)で直線で仕掛けられると、内にササりながら、あっという間に突き抜ける。遊びながら走って、まったくの完勝。
父
ジャングルポケット、息子
フサイチホウオーは
レースぶりの比較では瓜二つ。
体型からは
ジャングルポケットの仔とは到底思えないが、レースぶりを見れば、
ジャングルポケットの仔だとすぐ分かる。デビュー戦を見た時、ジャングルポケットを知る人間、ジャングルポケットに魅了された人間は少なからず、
「ヤンチャ坊主の再来」を感じ、喜んだに違いない。
新馬、芙蓉Sと2連勝中の
ドリームジャーニー(2番人気)。未勝利、きんもくせい特別と連勝している藤沢和厩舎の外国産馬
フライングアップル(4番人気)。
実績馬を抑えて、新馬勝ちしたばかりの
フサイチホウオーが堂々の1番人気。その要因は? 多くの人間が
フサイチホウオーに父を彷彿とさせる、ただならぬスケールを感じたからに他ならないだろう。
レースを振り返ろう。直線。好位に取り付き、馬なりの手応えの
フサイチホウオー。鞍上の
安藤勝騎手はライバルたちの出方を窺う。
外から飛んで来た
フライングアップルの仕掛けに反応し、
安藤勝騎手が追い出しを始めると、2頭の馬体がすり寄る。
一瞬、
フライングアップルが交わしたのだが、
「抜かせないぞ!!」という感じで
フサイチホウオーがさらに伸びる。
内から伸びて来た
ドリームジャーニー、外の
フライングアップル。実績馬に挟まれながら、堂々とした面持ちで
フサイチホウオーはゴールを駆け抜けた。
半馬身差の2着に
フライングアップル。
ハナ差の3着に
ドリームジャーニー。着差だけを見れば、辛勝のようにも取れる。
だが、なぜだろう。その2頭に差されるというヒヤヒヤ感は、まったくなかった。内容的には、力の差が歴然としていたように思う。
かつて、甲子園を湧かせた
松井秀喜や
松坂大輔は、ホームラン数や奪三振数といった数字でも結果を出していたが、やはり
独特のオーラ、スター性を放っていた。
フサイチホウオーに関しては、
重賞勝ちという結果は出したが、キャリア2戦だけに、数字ではまだ量り切れない。だが、個人的な感覚ではあるが、
独特のオーラ、スター性は確かに持っている。
クラシックという舞台に導かれる存在というのは、得てしてそういうもの。だからこそ、わずかな着差でも焦燥感に駆られることはない。偶然ではなく、必然だから。そう思わないと、説明がつかない。
「ヤンチャ坊主」フサイチホウオーの次走は、父
ジャングルポケットも走った
ラジオNIKKEI杯2歳S(G3、阪神芝2000m、12月23日)が有力だろう。
オーラ、スター性という感覚論から離れるためにも、クラシックの登竜門で、
ベールに包まれた実力をさらに明らかにしてほしいものだ。