位置づけが不明瞭となったレースを、アンバージャックが切り開く
東の
JCダートは
5連勝。西の
京阪杯は
4連勝。どちらも
下級条件からの上がり馬が連勝を伸ばして制したが、勝ち馬の実力は評価しつつも、やはり全体的なレベルが下がっているのではないか。そう危惧してしまう。
京阪杯は今年から
芝1200m戦となったが、出走馬16頭中、芝の重賞勝ち馬は4頭だった。
タガノバスティーユ(ファルコンS)、
デンシャミチ(京王杯2歳S)、
タマモホットプレイ(スワンS、シルクロードS)、
ワンダフルデイズ(クリスタルC)で、4頭中3頭が2歳・3歳限定の重賞ウイナーでもある。
芝1800mで行われていた時の
京阪杯はどうだったのか。昨年までの過去5年を調べてみた。
京阪杯過去5年の芝重賞勝ち馬数05年
12頭04年
9頭03年
7頭02年
7頭01年
10頭芝1800mという距離だと、マイルに適性がある馬も、2000mに実績があるタイプも、どちらも出走しやすい。だから、
さまざまなカテゴリーの芝重賞勝ち馬が参戦していた、という側面があった。
1200m戦となれば、基本的にスプリント重賞しかないわけで、当然、集まりにくくなる。加えて今年から
「サマースプリントシリーズ」を施行したことで、夏に多くの短距離馬が走った。裏を返せば、そういう馬たちはこの時期に休養に入ってしまうわけで……。ファンの興味が薄れるのも仕方ないのではないか。どこにつながる重賞なのか、よくわからないし……。
そんな不明瞭な位置づけの中、
アンバージャックがこのレースを制したのは、もしかしたらひとつの光明なのかもしれない。
前走の
京洛Sは外からズバッと差し、今回は内枠から好スタートを決めて先行しての抜け出し。500kgを楽に越える大型馬ながら、なかなか器用な面を持っている。
芝1200m以下のスプリント戦はこれで5戦5勝。しかもその5戦すべてで、メンバー中3位以内の上がり3Fを計時している。
今回のレースぶりだけを見ると派手さは感じないかもしれないが、なかなか奥が深い、十分凄みを感じさせる馬なのだ。
京阪杯は、開催時期が97年に春から秋に移行された。移されてからの5年間で、3歳馬が4勝している。その4頭はいずれも
菊花賞に出たものの距離が合わず、適距離に戻って勝ったものだった。
近年はその傾向も弱まっていたが、
「中距離第一線への登竜門」との位置づけは崩れていなかった。
今回、
アンバージャックがこのレースを制したことで、今度は
「スプリント第一線への登竜門」となる可能性が出てきた。
アンバージャックの今後の活躍次第で、来年以降のこのレースも活況になるかもしれない。
アンバージャックはこの後、一度放牧に出されて、来春のスプリント王者を目指すらしい。
初代スプリント京阪杯王者として、来年以降、どんな走りを見せてくれるか楽しみにしたい。