「ディープインパクト祭り」。その中で「岩田ァ~!!」と叫んでみた
文/関口隆哉
パドックを周回する
ディープインパクトに合わせて、カメラのフラッシュが弧を描いていく。
本馬場入場の際も、
ディープと
武豊のコンビに、一際大きな、熱狂的ともいえる声援が飛ぶ。
輪乗りの最中も、三分割された超大型ターフビジョンの映像が、すべて
ディープインパクトになった瞬間があった。
近年では珍しいくらいの大観衆が駆けつけた、この日の
東京競馬場は、まさに
「ディープインパクト祭り」の様相を呈していたのだ。
実は、禁止薬物の検出で失格した
ディープインパクトは、
「疑惑の判定」によって急速に人気が下降した
亀田興毅のようになってしまうかもと考えていたのだが、それはまったくの的外れだった。
むしろ、
「ディープに罪はないのだから、凱旋門賞での悔しさを、ぜひジャパンCで晴らして欲しい」というのが、大多数の競馬ファンの強い願いとなっていた。
「なかでも、いまの若い競馬ファンは本当に優しいんだな」周辺にいた若者たちのグループからディープへと向けられる、いかにも純粋で熱烈な声援を聞きながら、筆者はそんな感想を抱いた。
いつものように、
ディープインパクトはゆっくりとゲートを出た。
コスモバルクがハナに立ち、
トーセンシャナオーが2番手、やや離れたところから
ハーツクライ、
ドリームパスポートといった人気どころが続く。
ディープインパクトは最後方からの追走。そのすぐ前を、デット-リ騎乗の
ウィジャボードが行く。
ペースは平均から、ややスロー。少頭数ということも手伝って、向こう正面から3角にかけて、淡々とレースが流れていった。
4角手前から
ディープインパクトが動いた大外を廻りながら、徐々に前進を開始する。
直線、粘り込みを図る
コスモバルクの内から岩田騎乗の
ドリームパスポートが末脚を伸ばしてくる。
だが、大外から
ディープが別次元の伸び脚でやって来る。
筆者周辺の若いファンたちが手を突き上げながら
「ディープ、ディープ、ディープ!」と連呼している。
それに対抗するように
「岩田ァ~!!」と叫んでみたのだが、すでに勝敗の帰趨は見えていた。
ディープインパクトが
ドリームパスポートに2馬身差を付けて先頭でゴール。
ディープ一頭が大外を走ってきたこと、
ゴール板手前で武豊が手綱を抑え気味だったことを考慮すれば、この着差は決定的な実力差の証明とも言えた。
3着に
ウィジャボード、直線失速した2番人気
ハーツクライは着外に敗れ去った。
最終レースが終わり、東京競馬場を埋め尽くした大観衆たちが三々五々家路を急ぐ。
そのとき、ふと感じたのだが、
オグリキャップが活躍していた
「競馬ブーム」真っ只中のG1レース当日の競馬場は、最終レース後も、まだまだ熱気が充満していた、それに比べ、この日の東京競馬場は、すでに落ち着きを取り戻していたのだ。
「お祭り気分をいつまでも引きずらない」現代の若い競馬ファンには、そんな気質があるのかもしれない。