中京芝2000はダンスインザダーク産駒が躍進するきっかけとなる舞台
菊花賞で敗れた3歳馬が、次走で巻き返しを図るレースは
京阪杯が主であった。ところが今年から、京阪杯が
京都芝1800→京都芝1200へと変更。矛先は完全に
芝1800→芝2000へと変更された
中日新聞杯に向けられた。これは自然の流れと言ってもいいだろう。
過去5年、中日新聞杯で菊花賞組が参戦してきた例は2回ある。02年2着の
バンブーユベントス(菊花賞は7着)、05年6着の
コンラッド(菊花賞7着)の2頭だ。
コンラッドは父ダンスインザダーク、母父がヌレイエフ。偶然にも、
トーホウアランと同じ血統構成である。
トーホウアランもまた菊花賞で8着に敗れ、中日新聞杯へと駒を進めてきた。
コンラッドの足跡を辿るかのように。
血統面、
臨戦過程では瓜ふたつの2頭。だが、
コンラッドは2番人気で6着に敗れ、
トーホウアランは3番人気で1着となった。もちろん、同じ配合だからといって、能力まで同等であるはずはない。では、両者の明暗を分けた決定的な要因は何なのか。
それは、
ダンスインザダーク産駒の中京芝重賞の距離別成績に求められる。芝1800の重賞では
[0.1.0.7]なのに対し、芝2000の重賞では
[4.1.1.9]。たった200mしか違わないのに、成績は雲泥の差なのだ。どうして?
実は、中京の芝1800は
マイル寄りのタイプが台頭しやすく、
スピード色が強いコースなのだ。03年、04年の中日新聞杯を連覇した
プリサイスマシーンは、今年、スワンSを制し、マイルCSでも6着していた。
また、昨年の中日新聞杯で2着に好走した
ダンスインザモアは、ダンスインザダーク産駒の中で唯一、中京芝1800重賞で連対経験があるのだが、同馬は
マイルを中心に使われている。
一方、中京の芝2000は
中長距離寄りのタイプが台頭しやすく、
スタミナ色が強いコース。過去、中京記念や金鯱賞などで好走したダンスインザダーク産駒を見ると、
ツルマルボーイ、
タガノマイバッハ、
ザッツザプレンティなど、2000以上の重賞で好走歴があるタイプだった。
トーホウアランも芝2200の
京都新聞杯を制しており、
ステイヤータイプのダンスインザダーク産駒である。過去、中京芝2000で好走していたダンスインザダーク産駒と共通項があったことはおわかりいただけるだろう。
コース相性は疑いようのなかった
トーホウアランに関して、唯一の不安材料は
持ち時計のなさだった(本調子にあるか、状態面も不安と言えば不安だったけど)。
中日新聞杯前での芝2000での持ち時計は
2分1秒4。開幕週の良馬場で、果たして速いタイムでの決着に対応できるのかどうか。
ところが、そんな不安をよそに、
トーホウアランが叩き出したタイムは
1分57秒8! これまでは京都新聞杯をはじめ、スローペースの上がり勝負で実績を残していたのだが、
ハイペースの差し馬という本性を隠していたわけだ。
“隠していた”では語弊がある。3歳秋を迎え、
“パンとしてきた”、
“身が入った”ということなのだろう。馬が変わる瞬間を目の当たりにした気分だ。
かつて、4歳だった
ツルマルボーイは条件戦をステップに中京記念に挑み、重賞初勝利を挙げた。その後は、宝塚記念で2年連続2着、天皇賞・秋2着、悲願のG1勝利となった安田記念勝ちなど、目覚ましい活躍を遂げていった。
「中京芝2000はダンスインザダーク産駒が躍進するきっかけとなる舞台」前半1000m通過が
58秒2というハイペースを、中団から淡々と追走し、グイッと差し切った
トーホウアラン。今後、同産駒の
ツルマルボーイを越えるような活躍を見せるかはまだわからない。先輩はすごかったからね。
だが、
トーホウアランが迎える未来はきっと明るい。そう強く思えるのは、
先輩が刻んだ実績という事実があるからこそ。
トーホウアラン、君の未来に
幸アランことを(笑)。