この1、2着は「種牡馬戦国時代」のクラシック戦線を象徴している!?
東京スポーツ杯2歳Sを制し、2戦2勝の
フサイチホウオー。
札幌2歳Sを3連勝で通過した
ナムラマース。1戦1勝ながら、
デビュー戦で5馬身差の圧勝を飾り、
リンカーンの半弟という血統の良さもあって支持を集めた
ヴィクトリー。
その3頭に、皐月賞馬
ジェニュインのおいにして2戦2勝の
アサクサキングス、京都2歳Sで2着となった
ローゼンクロイツの半弟
ローズプレステージを加えた5頭が上位人気を形成していた。
いずれも
未知の魅力を秘めた2歳馬。ただし、裏を返せば、キャリアが浅いぶんポテンシャルを測りかねる2歳馬。よって、単勝人気の主たる要素が、
「馬券を買う人間がその馬につけた強さの印象点」と言っても、あながち間違いではないだろう。
そんな中、単勝1.8倍の支持を受けたのは
フサイチホウオー。
東京スポーツ杯2歳Sでは2着(
フライングアップル)と
半馬身差。勝ち時計も、
アサクサキングスが勝った百日草特別より
1秒2も遅かった。
負かした相手に
朝日杯FSを制した
ドリームジャーニーがいたにせよ、レース内容を示す数字を額面通りに受け取れば、それほどの単勝オッズになるとはちょっと考えにくい。
やはり、新馬戦で見せた
抜群の瞬発力、その東京スポーツ杯2歳Sで見せた並んでから抜かせない
勝負根性、そして父ジャングルポケットを彷彿とさせる
ヤンチャなレースぶり(笑)。
そういった印象の部分が、単勝人気に強く反映されているように思えた。そして、そこから派生する底知れない可能性。スケールという点では、
フサイチホウオーがぶっちぎりというのが馬券ファンの評価だったのだろう。
それはレースで見事、証明されることになった。道中は中団から追走し、脚を温存する
フサイチホウオー。手綱を取る
安藤勝己騎手からは
「この馬の競馬に徹するだけ」という意気込みのようなものが伝わってきた。
直線。逃げた
マイネルダイナモを交わし、粘り込みを図る
ヴィクトリーが先頭に躍り出る。これをめがけて、大外から抜群の手応えで
フサイチホウオーが進出する。
ところが、直線半ばで左ムチが入った瞬間、ムチに驚いてしまったのか
フサイチホウオーは右にササり、横にいた
アサクサキングスの進路を妨害してしまう。
レース後、
20分にも及ぶ長い審議の結果、失格、降着処分はなかったものの、
安藤勝己騎手には
10万円の過怠金が課せられることになった。過怠金は
10万円が上限であり、
失格、降着処分スレスレであったことは明らか。
ただ、お行儀の悪さを露呈したとはいえ、
ヴィクトリーをゴール寸前で差し切った
上がり34秒3という決め手は秀逸だった。2歳戦を終えた段階では、
フサイチホウオーが
クラシックの筆頭候補に躍り出たのは間違いない。
同じく、
ヴィクトリーもキャリア1戦の身で
フサイチホウオーとクビ差の接戦。しかも、前半はクビを上げるほど、気性の難しさを見せながらの2着だ。
フサイチホウオー以上に、
まだ底知れない破壊力を秘めている。
ナムラマースは、
フサイチホウオーのアオリを受け、直線で一瞬ブレーキをかけるロス。久々の影響も否定できないだけに、今回が実力と判断するのは早い。
次走が試金石だろう。
それにしても、
ジャングルポケット(父トニービン)産駒の
フサイチホウオーといい、
ブライアンズタイム産駒の
ヴィクトリーといい。いずれも、サンデーサイレンス全盛時代にダービー馬を輩出した2系統である(トニービン産駒は01年
ジャングルポケット、ブライアンズタイム産駒は97年
サニーブライアンと02年
タニノギムレット)。
今年から
サンデーサイレンス産駒がいなくなり、
「種牡馬戦国時代」などと言われているが、その元年におけるクラシックの覇者は、その2系統から誕生するのではないだろうか。実際、
サンデーサイレンスがクラシック戦線に登場した95年以前、93年のダービー馬はトニービン産駒の
ウイニングチケットであり、94年のダービー馬はブライアンズタイム産駒の
ナリタブライアンだった。
クラシックの登竜門・
ラジオNIKKEI賞2歳Sの結果が、来年のクラシック戦線を象徴しているように思えてならない。