すっきりとしなかった絶対評価が、相対評価という形ではっきりとした
文/編集部
エイシンイッキが果敢に飛ばして逃げたが、前半1000m通過は
60秒2。ペース自体は見た目の印象ほど速くはなく、2番手にいた
エーシンビーエル以下は完全にスローの流れ。
それにしても、だ。勝った
アドマイヤオーラの末脚は切れに切れた。上がりはなんと
33秒3!
アグネスタキオン産駒ということは百も承知だが、実は
サンデーサイレンス産駒だったりしませんか!?
「ナタの切れ味」と称された
シンザンもビックリだ(笑)。
レース序盤では、2着となった
ダイワスカーレットの方が
アドマイヤオーラより後ろの位置取りだったが、掛かり気味にポジションを上げて3番手に。
一方の
アドマイヤオーラはというと、
エイシンイッキの逃げにも、
ダイワスカーレットの動向にもまったく動じず。淡々と折り合いに専念し、末脚を温存していた。
直線では、
ダイワスカーレットが前で先に仕掛けたとはいえ、終いの
“切れ”の差は道中での
“折り合い”の差とも言えるだろう。
ただ、
ダイワスカーレット自身も
33秒7で上がっており、十分に切れている。折り合いを欠き気味に走り、直線でササるなど、末脚に影響するロスも多かったことを考えれば立派だ。今回は勝ち馬がそれ以上に切れた。それだけのこと。
3強の一角だった
ローレルゲレイロは、
ダイワスカーレットと同じ
33秒7という上がりで3着。
3強の中ではもっとも瞬発力勝負で分が悪いタイプだけに、2頭より後ろの位置取りではさすがに厳しかった。
直線で
アドマイヤオーラと
ダイワスカーレットにあっさり突き放されてしまったのも致し方なしといった感じだが、騎乗した本田騎手には
「差す競馬を覚えさせる」など、先を見据えた別の意図があったように思う。
いずれにしても、
ローレルゲレイロはG1・
朝日杯FSで勝ち馬
ドリームジャーニーと0秒1差の2着となった実力馬。と同時に、G1で勝ち負けができるかどうかのレベルを測る物差し馬でもある。
その比較から言えば、
ローレルゲレイロを相手にしなかった
アドマイヤオーラと
ダイワスカーレットは、十分にそのレベルに達していると推察できるはずだ。
2歳時は強い相手との対戦経験がなかった2頭だけに、
“大物感のある良血馬”という評価止まりであって、本当の意味で実力を証明してはいなかった。
そのすっきりとしなかった
絶対評価が、
相対評価という形ではっきりとしたわけだから、今後のクラシック戦線を占う意味でも、非常に重要な一戦であったのは間違いない。
また、
アドマイヤオーラと
ダイワスカーレットが示したのは己の実力だけに止まらず、
2世代目のアグネスタキオン産駒はひと味違うということだろう。
初年度産駒は、
ロジックが
NHKマイルCでG1制覇を成し遂げたものの、3歳クラシックには縁遠かった。2歳時に25頭も勝ち上がったのに、
皐月賞、
ダービー、
オークスへの出走馬はそれぞれ1頭ずつで、
桜花賞などは出走馬すらなかったわけで。
初年度産駒は2歳終了時点で2勝馬が
2頭(
ロジック、
ショウナンタキオン)だったが、今年は
ダイワスカーレットを含め2勝馬が
5頭(その他は
ルミナスハーバー、
ニュービギニング、
ダノンジュンコウ、
マイネルソリスト)。
アドマイヤオーラが、
シンザン記念で早々に6頭目となった。
今後の3歳重賞戦線でも、素質を秘めたアグネスタキオン産駒が続々と登場する。
シンザン記念はその皮切りなのかもしれない。