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引退間近の調教師の前で頑張ったアサカディフィート。最高齢だった彼なりのエールだったか
文/長岡伸治

「納豆は悪くない」

テレビ番組のやらせに関して、一介の記者からコメンテーターまで、多く媒体でそんなコメントが発信された。

どこかで聞いたことあるなあ、と気になっていた。そう、凱旋門賞の薬物騒動の時のあれだ。

「ディープは悪くない」

言われなくてもわかっている。納豆ディープも悪いわけがない。

納豆なんか、ダイエットへの効果はともかく、優れた食品であることは、日本人なら誰もが知っていることだし、ディープインパクトがいくら強い馬だって、自ら薬をあれやこれや、なんてことがあろうはずもない。

「旧年齢でいうと10歳で~」

小倉大賞典のレース後、競馬中継の中でもこんなコメントが何度も聞かれた。

この換算も、あまり意味はない。特に、アサカディフィートは、これまでに何度も穴を出している馬であり、しかも今回はトップハンデ。つまり、実力もオフィシャルに認められているということ。それほど驚くような結果でもなかったように思う。

高齢ということで言えば、今回、2月いっぱいで定年となる瀬戸口師(マルカシェンク・1番人気7着)、湯浅師(エイシンドーバー・2番人気2着)、伊藤雄師(マチカネオーラ・4番人気9着)の管理馬が参戦していたことも話題となっていた。

サラブレ本誌にも書いたことだが、この定年制度、なんとかならないものだろうが? 「やれやれ」と、達成感に満ち溢れて引退するのであれば、それはそれで素晴らしい。イヤミではなくて、心から「お疲れ様でした」と申し上げたい。

ただ、「まだまだやれる!」と能力、気力、体力の充実を自他ともに認める方々が、強制的に追い出されてしまうのは、競馬界にとって間違いなく大きな損失である。

ここはひとつ、結果だけで判断できる「ランキングが半分より上だったら」とか「○勝以上であれば」などという条件を設けて、それを超えていれば、あと●年延長できる、というような誰もが納得できるにシステムにしてみてはどうか。

競馬は一般企業とは違う。来年には米寿を迎えようかという境勝太郎さんあたりが、いまだに現場で口角泡を飛ばして、陣頭指揮を執っている姿などを想像すると、それだけで競馬が面白くなるような気がしませんか?

もし、敬老の日に「70歳以上調教師ステークス」なんてレースがあって、パドックから本馬場まで、調教師自身が馬を引いていくようなイベント(もちろん競馬はガチンコ)があれば、とか、考えただけでワクワクしてきませんか?

引退間近の3人の調教師が揃い踏みだったレースで、頑張ったアサカディフィート最高齢だった彼なりのエールだったのだろう。

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