熱めのお風呂が大好きなおじいちゃんも、エムオーウイナーの走りにはご納得?
文/編集部
ディープインパクトが現役引退して、
2007年の日本競馬はいったいどうなるんだ!?と心配をする人がいるけど、日本競馬っていうか、
短距離路線はどうなるんだ!?という感じが非常に強い。
昨年一年間で芝1200mの古馬重賞は10鞍行われたが、2勝以上を挙げたのは、
CBC賞と
セントウルSを制した
シーイズトウショウだけで、残りの8レースはすべて別の馬が制した。OP特別を含め、先週までの成績を入れても、19鞍で16頭の勝ち馬が誕生、複数勝利を収めたのは
3頭しかいない。
そして、
07年最初の古馬による芝1200m重賞だったこのレースも、重賞初挑戦の
エムオーウイナーが勝利。主役不在のスプリント路線が、さらに混沌混迷の色を濃くしている。
昨春のスプリント王者
オレハマッテルゼにしてみたら、
シーイズトウショウとゆったり浸かっていた
『スプリント風呂』に、次から次へと入ってくるヤツが現れて、秋には
豪州から入浴しに来る者まで登場。もう十分ギュウギュウ詰めなのに、さらに
アンバージャック、
エムオーウイナーも加わってきて、
「まだ入るんかいっ!」と言いたいところか(笑)。まあ、自分自身の成績が冴えないのが一因なんでしょうが。
スプリント路線が混迷の度を深めている要因には、かつての
ビリーヴや
デュランダルのような、
絶対的な存在がいないことが挙げられる。当たり前の話ですが。
ビリーヴや
デュランダルと、近年のスプリント重賞勝ち馬とでは、何が違うのか。調べてみると、やはり
“しょっぱなのタイム”が違っていた。
例えば
ビリーヴは、4歳夏に4連勝を決めてG1制覇を成し遂げているが、その4連勝の勝ち時計は次の通り。
佐世保S:
1分7秒7北九州短距離S:
1分7秒8セントウルS:
1分7秒1スプリンターズS:
1分7秒7下級条件から
1分7秒台を連発して頂点まで上り詰めているのだ。
例えば
デュランダルは、
3歳秋の中山芝1200m戦(白秋S)で、すでに
1分7秒8をマークして1着。4歳秋に休み明けで挑んだ
セントウルSを
1分8秒0で3着となり、次走の
スプリンターズSも同タイムで1着となっている。
これらに対して、前記した19鞍(06年以降の古馬OP以上の芝1200m戦)の勝ち時計はどうか。19戦中、
1分8秒0以下だったのは次の5レースだ。
1分7秒5福島民友C(コパノフウジン)
1分8秒0高松宮記念(オレハマッテルゼ)
北九州短距離S(ゴールデンキャスト)
北九州記念(コスモフォーチュン)
尾張S(スピニングノアール)
14年も前の
93年スプリンターズSで、
1分7秒9を叩き出して優勝した
サクラバクシンオーがこれを見たら、
「ぬるま湯すぎるんぢゃー!」と怒るかもしれません(笑)。それこそ、
風呂に入ってきて、いきなり蛇口を捻って、お湯の温度を猛烈に上げちゃうおじいちゃんみたいな感じで(笑)。
しかし、今回優勝した
エムオーウイナーに対しては、そんな熱めのお風呂が大好きなおじいちゃんも、納得するんじゃなかろうか。
エムオーウイナーがマークした時計は
1分7秒8。2着の
タマモホットプレイが
1分8秒0だったので、出走馬中、唯一の1分7秒台であった。
エムオーウイナーは、昨年4月の
鷹ヶ峰特別(京都芝1200m)で
1分7秒8、10月の
福島民友C(福島芝1200m)でも2着ながら
1分7秒5をマークしており、1分7秒台は今回が自身3度目。時計面だけで言えば、すでに
今後のスプリント界の柱になるのに十分の有資格者なのである。
6歳にして開花するというのは
スプリント路線では珍しいことではあるけれど、今の短距離路線の主要メンバーは
1分8秒0に壁を感じさせる馬が多いので、一気に勢力図を塗り替えることがあっても不思議ではない。
ちなみに、昨秋に豪州からやってきて
スプリンターズSをかっさらった
テイクオーバーターゲットは、05年12月に
1分7秒8で勝ったことがある。
熱めの風呂でも大丈夫な外国の方なのだ(笑)。
スプリント路線は、
香港勢、
豪州勢が入り乱れて、高速化の流れになってきている。今年も
熱湯風呂が大好きな外国馬が押し寄せてくるだろうから、
エムオーウイナーが果たす役割は小さくないんじゃないだろうか。