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サンライズバッカスはいろんなプラスを積み重ねて勝ちにつなげた
文/安福良直

本命不在の大混戦と言われていた今年のフェブラリーSは、3番人気のサンライズバッカスが鮮やかに差し切り、待望のG1制覇を成し遂げた。

大混戦と言われていたのは無理もない。だって、昨秋以降(正確に言うと武蔵野S以降)の中央のダート重賞は、これが重賞初制覇という馬がことごとく勝っていたからだ。こんな状態だから、いったい誰が強いのかがさっぱりわからないのも当然だ。

そして今日の天気も、午前中はずっと雨が降っていたかと思えば、午後は上がってファンファーレが鳴る頃には晴れ。天気すらも、良いのか悪いのかよくわからない。

こういうレースを勝つには何が必要か。一昨年のメイショウボーラーのように、圧倒的な武器があれば問題ないのだが、それもない場合は、いろんなプラスを積み重ねて勝ちにつなげる。一見地味だが、それが勝利への近道。今回のサンライズバッカスの勝利は、まさにそんな感じだった。

確かにサンライズバッカスには、さまざまなプラス要因があった。第一に、東京ダート1600mが得意、という点。この舞台では1勝しかしていないが、それがカネヒキリを負かしての勝利だから、他の馬の5勝分の価値はある。昨秋の武蔵野Sも2着だったから、カネヒキリに勝ったのはフロックではない。

次に、鞍上に目下絶好調の安藤勝騎手を迎えた点。安藤勝騎手現在リーディング1位というだけでなく、勝率連対率ともに驚異的な高さ。連対率は5割に迫っていて、今の安定感は武豊騎手以上。

今回の騎乗も冴えていて、特に道中の位置取りがベストだった。平均ペースの中、馬群がばらけたところを砂を被らずに追走。これが最後の末脚につながった。

ところで、サンライズバッカスにはこれまで多くの騎手が乗ってきたが、実は同じ騎手が続けて乗る方が成績がいいのだ。カネヒキリを負かしたのも、鞍上が佐藤哲騎手に固定していた時期。今回は安藤勝騎手に替わっての3戦目。人馬の息も合う頃だったのだ。

さらに、枠順も味方しただろうし、増え続けていた馬体が締まったのも良かった。ダート馬には巨漢が多いが、フェブラリーSの歴代勝ち馬は450キロ台の馬が多く、時期的に仕上げやすい小柄な馬の方がいいのだろう。その点、この日は2キロとはいえマイナス体重だったのは大きい。

対照的だったのが2着のブルーコンコルドで、プラス8キロのせいか動きが重く、左回りは克服したはずなのに内にモタれたりしていた。こちらは坂を上ってからようやくエンジンがかかったが、2着に来るのが精一杯。年明けにひと叩きできていれば、結果は違っていたような気がするが、昨秋は使い込んでいただけに難しいところだ。

というわけで、得意コース最強の騎手に鞍上を固定、馬体減など、いろんなプラスを積み重ねることによってG1をもぎとったサンライズバッカス

今後の古馬戦線は、短距離路線、そしてディープインパクトの抜けた長距離路線と、大混戦ばかりだけに、サンライズの勝利は今後のヒントになりそうだ。ずば抜けた何かを持っている馬がいないのなら、小さなプラスをたくさん積み重ねた馬を選びたい。

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