ファルコンSは今年が本当の意味での再スタート!?
文/浅田知広
昨年からこの時期(1回中京2週目)に開催されるようになった
ファルコンS。事実上、一昨年まで
中山で行われていた
クリスタルCと考えればいいだろう。
クリスタルCといえば、中距離に適性のない(旧)4歳馬のために創設されたスプリント戦である。しかし、当時はまだ
高松宮記念はもちろん、
スプリンターズSもG1昇格前で、先々へ向けても少々微妙な感のある一戦だった。
その後は、94年から04年までの11年間で10度も
外国産馬が制するという
「マルガイ」のためのレースへと変貌。のちに創設される
NHKマイルCへ繋がる一戦ともなったのだが、これはこれで本番には直結しないレースという位置づけ。そしてトドメに一昨年をもって廃止と、どうも報われないレースだった印象がある。
一方、
ファルコンSそのものの前身、
中日スポーツ賞4歳Sはというと、創設当初は
ダービー後の1800mで、関東でいえば今の
ラジオNIKKEI賞的存在。それが96年から
スプリント戦となり、さらには昨年から
クリスタルCの後釜にと、こちらも
「いいようにいじられている」レースという印象だ。
そんな不遇な2レースが合体した昨年のこのレース。勝った
タガノバスティーユは、
スプリンターズS3着という激走こそあるもののその後は未勝利で、2着
アイアムエンジェルはふた桁着順ばかり。1番人気3着の
レッドスプレンダーにいたっては1000万条件すら勝てずと、非常に幸先の悪いスタートになってしまった。
などということを考えていると、レース前から観戦意欲は下がりまくり。これではいかん、というわけで、これを逆手にとって前向きに。少々大げさではあるが、今年の勝ち馬や上位馬が、このレースの将来を左右するのだ、くらいの意気込みで観戦してみた。
そんな大事な一戦(?)を制したのは、短距離無敗の
アドマイヤホクトだった。92年にこのレース……ではなく
クリスタルCを制したのは
サクラバクシンオーだったが、
変則親子制覇のみならず、なんと
3着までを独占。
外国産馬ばかりが上位を占めていた一時の
クリスタルCとは一変の結果だ。
クリスタルCの数少ない内国産の勝ち馬には、
ダイタクヘリオス、
サクラバクシンオーとG1馬の2頭が名を連ね、さらには
ダート短距離種牡馬として地味に結果を出している
カリスタグローリなんて名前もあったりする。
それも90年台前半だからもう15年も前の話だが、その間の
「マルガイの時代」を取っ払えば、実はそう悪くないレースなのかも、と思ったり。マルガイならぬ
マルチチが上位を占めた今年が、本当の意味での再スタートなのかもしれない。
勝ちタイム
1分8秒0は、過去の
ファルコンS、
クリスタルCを通じて
歴代2位の好時計。好位から楽々と抜け出してこの時計を叩き出した
アドマイヤホクト。
朝日杯FS15着の印象が良くないのだが、実は父の若い頃と同様に、
短距離なら結構な強さを秘めている可能性もありそうだ。
1400m以下4戦4勝。この連勝が果たしてどこまで延びるのか、そして
「不遇」の
ファルコンSがこの先どんなレースになってゆくのか。レース前のしょんぼりした思考はどこへやら、ちょっと楽しみになってきた。
願わくば、来年のこのレースは観戦意欲マックスで迎えたいものである。