「二冠馬の底力」には、ただ脱帽するしかなかった
文/編集部
単勝オッズ1.9倍でも、
メイショウサムソンは負けるんじゃないかと思っていた。
メイショウサムソンは
デビュー戦が2着で、
唯一の休み明けでもある神戸新聞杯も2着。その
神戸新聞杯は、みなさんも記憶していると思うが、道中で行きたがり、
石橋守騎手が制御するのに苦労するレースぶりだった。
神戸新聞杯は16頭立てだったが、今回は11頭立ての少頭数。スローな流れになりそうで、そうなれば引っかかる危険性はさらに高まると感じていた。
今回は、
高橋成忠厩舎への転厩初戦でもあった。厩舎が変わり、
担当厩務員も替わる。これは想像以上に大きなことだ。まして、昨年の
二冠馬である。受け入れる側にプレッシャーがないはずがない。
高橋成厩舎と言えば、通算103戦の
スペインランドがいたように、
「使って使って良くなる厩舎」のイメージがある。
メイショウサムソン自体も叩き良化型だが、厩舎も同じ傾向がある。
パドックに現れた
メイショウサムソンは、前走と同じ
518kgだった。きっちり仕上げてきた、と見る向きもあったようだが、この
518kgという数字は、
ダービー制覇時より16kg重いものである。
昨秋の
神戸新聞杯に
10kg増(512kg)で出てきてから、
菊花賞6kg増(518kg)、
JC4kg減(514kg)、
有馬記念4kg増(518kg)と減っていない。
512kg以下でしか連対経験がないので、
まだ太いとも考えられた。
さらに言えば、
大阪杯は前年のクラシックホースがよく苦杯を嘗めるレースでもある。
アグネスフライト 10着
イシノサンデー 6着
エアシャカール 2着
ダンスパートナー 4着
ヒシミラクル 7着
ベガ 9着
メジロドーベル 2着
90年以降、前年のクラシックホースが4歳になって
大阪杯を制した例は、
トウカイテイオー 1着
ネオユニヴァース 1着
この2頭だけ。
「皐月賞&ダービーの二冠馬なら勝つ」とも言えたが、どうも説得力に欠ける気がしてならなかった……。
果たして、
メイショウサムソンの単勝オッズ1.9倍は妥当な数値なのか。頭の中は90%ぐらいが
懐疑心で占められていたが、レース後には正座をして頭を下げていました(笑)。まさに脱帽の走りだった。
折り合いに苦労する場面は見せず、3~4コーナーで外をスーッと上がっていく様は、まるで
サンデー産駒のようだった。
シャドウゲイトが前で楽をしていたために、最後の直線では激しく食い下がられたが、
格が違うとばかりにねじ伏せた。
このねじ伏せ方を目の当たりにして、ようやく、G1をひとつ勝つのと2つも制するのとでは、底力が違うことを思い知った。そういえば、前厩舎の先輩二冠馬、
ネオユニヴァースの大阪杯制覇時も、逃げる
マグナーテンを頭差だけ抑え付けて勝利したものだった……。
聞けば、
メイショウサムソンの新たな担当厩務員は、
この道30年を超えるベテランだという。
高橋成調教師が
この道31年目なら、
石橋守騎手も
23年目。修羅場をくぐり抜けてきた回数が違うのだろう。
メイショウサムソンの次走は、もちろん
天皇賞・春。叩き良化型の同馬だけに、さらなる上積みが見込めるのは当然だろう。ただ、相手が楽ではないことも事実だ。
阪神大賞典の上位4頭に、
日経賞の上がり馬もいる。加えて、大阪杯優勝馬で次走の天皇賞・春も制した馬は、90年の
スーパークリークまで遡るというデータもある。
メイショウサムソンが拠り所とするのは……それこそ
「二冠馬の底力」かもしれない。
天皇賞・春に出走を予定している馬で、G1を2勝以上しているのは、
メイショウサムソンと
デルタブルースだけ。国内G1に限れば
メイショウサムソンのみとなる。
デビュー以来のコンビを組む
石橋守騎手が、常々、口にする
「二冠馬に恥じない走り」。それを
天皇賞・春で期待するのも悪くないのかもしれない。