スプリングドリューは例年通りの穴パターンではあったが……
文/浅田知広
レース創設以来、3年連続して前走ふた桁着順の馬が連対し、同様に7番人気以下の人気薄も3連続連対と、どうにも一筋縄では収まらない傾向が続く
福島牝馬S。
今年は単勝5.4倍から6.6倍まで、たった1.2倍の間に1~5番人気がひしめくという、ファンの多くが本命馬すら簡単には決めかねるような難解な一戦となった。
こういった混戦模様のレースになると、上位人気が
「結構つく」反面、下位人気も
「それなり」のオッズにしかならず、ちょっとした穴馬が突っ込んできたくらいでは大した配当にならないもの。
実際、今年のこのレースも9番人気の
スプリングドリューと4番人気
フラッグシップの組み合わせで、
馬連万馬券には届かず、という結果だ。
とはいえ。勝った
スプリングドリューは
単勝21.9倍とオッズの上では
「買える範囲内」でこそあれ、9番人気はやはり
「9番目」には違いない。
前走の愛知杯が13着大敗で、
斤量は53から55キロに2キロ増。さらに、
過去4度の重賞挑戦がいずれも着外の
7歳牝馬ときては、いくらデータ上
「前走ふた桁着順馬には注目」だったとしても、そう簡単には手が出ないものである。
もっとも、5走前には
準オープンで
コスモマーベラスを下し、続く
府中牝馬Sではその
コスモマーベラスにクビ差。簡単には手を出せなくても、あれこれ考えれば手が出ないこともない、という思考の反映が20倍そこそこという単勝オッズに表れていた。
来年以降のために
「手が出そうで出ない馬に手を出すべきレース」と、しっかりと記憶に留めておきたい。
さて、その
スプリングドリューだが、父ミシルの産駒は02年の
ホワイトカーニバルの
フェアリーS以来となる
重賞2勝目。
北海道での好走をよく目にするものの、適距離は産駒によってバラバラという印象しかなく、ちょっとピンと来ないもの。せっかくの機会なので、ちょっとデータを調べてみた。
すると、やはり好成績なのは
札幌、
函館で、特に
芝に限ると他場との差は歴然としてくる。どうしても下級条件の馬が多く、冬から春はダート中心の出走になるが、
夏の北海道で
ダート→芝替わりの馬がいれば狙ってみるのも面白い。
そしてもうひとつ、北海道以外ではなぜか
阪神コースでの成績が良い。
スプリングドリューには
阪神の経験こそないが、すでに5場で勝利を挙げているように、ドコへ行ってもそれなりには走るタイプ。少なくとも
阪神を苦にすることはないだろう。
北海道と
阪神、そして
古牝馬のレースといえば、
クイーンSに
マーメイドS。もちろん、今回の勝利は抜けた実績馬が不在の混戦模様、かつ中団やや後方を進んだこの馬がきっちり差せる展開になったことが、この勝利に導く大きな要因であることは確かで、勢いづいて牝馬重賞路線の中核を担うのは厳しいだろう。
ただ、だからこそ穴党向きの存在になってくる。少々凡走が続いたとしても、このくらいのメンバーで差しが決まる競馬になれば、一気に差し切るだけの決め手を持っていることは今回で証明した。
マーメイドSは6月、
クイーンSは8月と、少々間隔があるのも、もう一度
「穴」になるにはもってこい、とも言える。数ヶ月後、他のファンや評論家と一緒になって忘れてしまわないよう、頭の片隅にでもひっかけておきたい。