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最大目標であるG1が他のG1の敗者復活戦では困る
文/安福良直

1番人気馬の単勝オッズがレース直前まで6倍を切れない異常事態(最終的にはローレルゲレイロ5.5倍にまで下がった)。レースではとんでもないことが起こるんじゃないか、と思ったのだが、こちらの想像を超える大波乱になってしまった。

ブービー人気の牝馬ピンクカメオが勝ち、しかも3着に最低人気ムラマサノヨートーが突っ込んで、3連単は1千万円寸前の超高額配当。大波乱になるだろうと思っていても、この馬券は獲れないなあ。

なにせ、勝ったピンクカメオの買い材料からして乏しすぎる。この馬の取捨のカギは馬体減との戦いで、モロに馬体が減った阪神JFで惨敗。でも早めに栗東入りし、馬体減なしで挑んだ桜花賞でもやはり惨敗。今回はまた大幅馬体減のマイナス12キロ

あれだけ苦労した桜花賞の後でドーンと馬体が減ってしまうなんて……。ということで、馬体重の発表と同時に人気はどんどん下がってブービー人気。走る前はまさに「弱り目にたたり目状態」にしか見えなかった。

しかも、レースでは直線で前が詰まり、残り300mの時点でもまだ最後方。でもその瞬間、馬場のいい大外に出せたことで道が開いた。牝馬らしい一瞬の切れ味に、内田博騎手の豪腕も相まって、あっという間の大逆転劇が生まれた。

結果論だが、馬体が減ったことも切れ味を鋭くするのには役立ったのかもしれない。それまで何もかもが悪い方へと流れていたのが、残り300mで一気にすべてが良い方に向いた。ある意味、勝負の流れの激しさを示した一戦と言えるだろう。

それにしても、残り300mの時点で最後方にいた馬が差し切ったG1(正式にはJpn1)なんて、見たことがないぞ。配当もそうだが、レース内容も衝撃的ではあった。

ただ、衝撃的なのは悪いことではないが、今後のNHKマイルCというレースの意味を考えると、今回の内容は喜ばしいものではないだろう。

NHKマイルCが創設された当初は、クラシックに出られない外国産馬たちが春の最大の目標にするレースで、超高速決着が続出して迫力があった。

しかし、外国産馬にもクラシックへの道が開けるようになると、今度はクロフネキングカメハメハのようにダービーへのステップとして使われるようになり、最近は桜花賞や皐月賞の敗者復活戦という色合いが濃くなってきた。

それでも今まで、桜花賞皐月賞で負けた馬がこのレースを勝ったことだけはなかったのだが、今年はついに敗者同士のワンツーが決まってしまった。

それも桜花賞14着馬皐月賞6着馬、掲示板に載ることができなかった馬同士だもんなあ。G1たるもの、最大目標のレースだからG1なのであって、他のG1の敗者復活戦では困るのだが……。

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