あなたをダート界のディープインパクトと呼んでもいいですか!?
文/編集部
昨年の菊花賞後、
武幸四郎騎手に話を伺う機会があった。その時に
「すごく期待している馬がいるんですよ。札幌でダートの1000万を勝ったんですけど、メイショウトウコンという馬です」と
武幸四郎騎手は話した。
その直後、
メイショウトウコンは準OPの
花園Sを制し、年明けには
平安Sまで制することになる。
武幸四郎騎手の期待通り、
メイショウトウコンは自慢の豪脚を繰り出し、一気に重賞まで制したのだった。
ただし、
平安Sで
メイショウトウコンに騎乗していたのは
石橋守騎手。
武幸四郎騎手は騎乗停止中だったため、
平安Sで騎乗することは叶わなかった。
自分の期待馬が他のジョッキーの手によって重賞初制覇を飾る。ジョッキーとして、これほど悔しいことはないはずだ。
平安S後は再び
武幸四郎騎手に手綱が戻ったものの、
フェブラリーS11着、
アンタレスS3着と勝ち切れず。
そうして迎えた
東海S。
武幸四郎騎手の胸中には、並々ならぬ思いがあったことだろう。だが、レースではじっくりと後方待機。焦る素振りなどまったく見せず、
メイショウトウコンの豪脚を見事に引き出し、勝利へと導いた。
3~4コーナーで追っつけ通しだった
キクノアローを馬なりで交し、ジワジワとポジションを上げて行き、直線一気。上がりはメンバー中最速となる
36秒5を叩き出した。
2着
ワンダースピード、3着
シャーベットトーン、4着
サカラート、5着
マイネルボウノット。
4角で好位にいた馬たちが掲示板を占めた展開を考えれば、特筆モノの末脚だろう。
ダート8戦でメンバー最速上がりをマークしたのは6回目。
ダート界のディープインパクトという称号を与えたくなるくらい、今回も
メイショウトウコンは軽く飛んでいた(笑)。
今回の差し切りがいかに秀逸か。それは過去5年の
東海Sの成績を見ればよくわかる。
メイショウトウコンは道中で
13番手、4角でも
9番手だったが、過去5年で4角7番手以下だった馬は
[0.1.1.40]なのだ。
2~4着となった馬たちのように、
4角で好位にいることが
東海Sで好走するための言わばセオリー。
メイショウトウコンはそのセオリーを覆して勝ったのだから、完勝以外の何物でもない。
前述した成績では、4角7番手以下からの競馬で
2着と
3着が1回ずつあった。それはいずれも、
JCD、
JBCクラシック連覇、
帝王賞、
川崎記念と
長距離G1で5勝を挙げた
タイムパラドックスによるもの。
確かに、
メイショウトウコンと
タイムパラドックスでは、出走馬のレベルに差があるのかもしれない。ただ、G1で5勝した
タイムパラドックスさえ勝てなかった競馬で、
メイショウトウコンは勝ってみせた。これは事実である。
タイムパラドックスとの比較からいっても、
メイショウトウコンを
ダート界のディープインパクトと呼ぶことに差し支えはないはず。
東海Sの
メイショウトウコンには、それだけの
インパクトがあった。それもまた事実なのだから。
武幸四郎騎手の期待通り、
メイショウトウコンはもはやダート長距離界の期待をも背負う立場となった。
幸四郎=トウコンのコンビは今後、どんなフライトを見せてくれるのか、実に楽しみだ。