欠点がなくなっていくアドマイヤムーンの成長力は見事
文/安福良直
国内外のG1馬7頭が揃い、文字通りの
「ドリームレース」となった今回の
宝塚記念。ただ、直前に大雨が降ったのは残念であった。
ダイワメジャーや
ウオッカはそれで戦意喪失したか、お互いに前半から折り合いを欠き、らしさを発揮することなく惨敗。良馬場で
ウオッカの斬れ味が古馬相手にどれだけ通用するか、というのは見てみたかったけどね。
今日のところは古馬に負けたというより、天気に負かされたレースということにしておこう。雨によるダメージがないのなら、
凱旋門賞に向けて悲観的になることはないと思う。
それにしても、雨にもめげなかった馬たちの戦いは
「ドリームレース」にふさわしいものだった。何しろ最初の5ハロンの通過が
57秒5。
雨馬場を考えれば超ハイペースで、しかも3コーナーから後続集団がどんどん押し寄せる肉弾戦。息をつく間がまったくない、典型的なサバイバルレースだ。
G1たるもの、こういうレースであってほしい、と思った人も多いはず。だからこそ、その中で最後まで叩き合った
アドマイヤムーンと
メイショウサムソンは、
「本当に強い馬」と言っていいだろう。
それにしても、
アドマイヤムーンはこの半年で実に力強くなった。昨年の春は、斬れ味は一流だけどモロさもあったのが、今年の
京都記念で斤量と馬場を克服し、
ドバイで遠征を克服し、そして今回は並んで強い
メイショウサムソンに叩き合いを挑んで勝利した。
乗り替わりも問題なかったし、1頭の馬(
メイショウサムソン)をマークするという競馬も初めてだと思うが、これも大丈夫だった。走るたびにいろんなことを覚え、欠点がなくなっていく成長力は見事。
昔の名馬を表現した言葉で
「コダマはカミソリの切れ味、シンザンはナタの切れ味」というのがあったが、それでいくと
アドマイヤムーンは、
「昨年はカミソリの切れ味、今年はナタの切れ味」と言ったところか。
今秋は
ウオッカや
メイショウサムソンの
凱旋門賞挑戦に注目が集まると思うが、海外の大レースに勝つ可能性がいちばんある馬となると、やはり
アドマイヤムーンだろう。
敗れはしたが、
メイショウサムソンも
サムソンらしい王道の競馬を見せた。
凱旋門賞に行っても、王道の
先行抜け出しで勝負してもらいたいものだ。
それ以外で印象に残ったのが、
カワカミプリンセスの積極的な競馬。
今日の馬場、
ペースと
カワカミの脚質を考えれば、
4角先頭というのは早すぎるのだが、
「前走が本来の姿ではないのよ!」という意志は感じた。
結果的にはスタミナをなくして掲示板も逃したのだが、秋に向けての手応えはつかめたはず。