この勝利は己のスタイルを崩さない姿勢がもたらした
文/編集部
昨年のオークスで2~4着だった4歳馬
フサイチパンドラ、
アサヒライジング、
アドマイヤキッスが1~3番人気。
昨年のクイーンSの覇者である5歳馬
デアリングハートが4番人気。
マーメイドSを制して勢い盛んな6歳馬
ディアチャンスが5番人気。唯一の3歳牝馬
イクスキューズが6番人気。
この6頭が単勝10倍を切るオッズとなっていたが、
各世代を代表する牝馬が顔を合わせ、12頭立てという少頭数ながら興味をそそる一戦だった。
結果は1着
アサヒライジング、2着
イクスキューズ、3着
ディアチャンス、4着
アドマイヤキッス、5着
フサイチパンドラ。終わってみれば、前述した6頭のうちの5頭で掲示板を占めたわけだ。馬券ファンも目が肥えている。
それにしても、
アサヒライジングの勝ちっぷりは鮮やかだった。行くと思われた
シェルズレイが出負けし控えたことで、マイペースの逃げを打てたという展開面での恩恵があったにせよ、2着以下に1馬身3/4差をつけての完勝である。
1000m通過は
60秒2。
2着に粘った
ヴィクトリアマイルの1000m通過が
58秒2だったことを考えても、これは
アサヒライジングにとって
スローペースと言えるはず。そこから上がり4Fで
11.8-11.5-11.2-12.0と3~4コーナーでペースを加速させ、後続になし崩し的に脚を使わせる展開に持ち込んだ。
アサヒライジングの上がりは
34秒7。3~4コーナーで動いて行った
アドマイヤキッス(34秒4)、
フサイチパンドラ(34秒6)には厳しい流れに。両者の差がなかなか詰まらなかったのも、同じ脚色にされてしまったからだ。
アサヒライジングの直後にいた
イクスキューズ(34秒8)が、同じ脚色で4コーナーと同じ位置取りのまま
2着になだれ込み、
直線一気という自ら違う競馬に徹した
ディアチャンス(34秒0)が
3着に届いたのも納得がいく。
勝ち時計
1分46秒7はコースレコードタイ。
アサヒライジングの走りも見事、
柴田善臣騎手のペース配分もまた見事だった。逆に、スタートで誤算があったにしても、展開面での期待を裏切る形となった
シェルズレイ-
四位騎手のコンビには失望を隠せない。
自分の競馬に徹することがいかに大事か。
アサヒライジングの勝利はそれを証明していた。重賞で2着4回、3着1回、4着2回、5着1回。惜敗を続けても、自分の競馬を貫いてきた。
苦節11戦目での重賞初制覇。ちょっと大げさな言い方かもしれないけど、
己のスタイルを崩さないその姿勢がもたらした勝利だと思う。勤勉さはいつかは報われるということだろう。
お父さんの
ロイヤルタッチも、
新馬、
ラジオたんぱ杯3歳S、
きさらぎ賞でデビュー3連勝を飾ったものの、
皐月賞2着、
ダービー4着、
菊花賞2着と三冠でタイトルを手にすることは適わなかった。
だが、
中団差しのスタイルを守り、重賞戦線で堅実な走りを見せ、常にレースを盛り上げてくれていた。戦績的には
「名脇役」と位置付けされてしまいそうだが、そういう馬がいるからこそ、競馬は盛り上がるのだ。
アサヒライジングはクイーンS制覇を契機に、主役の座(G1タイトル)を射止められるだろうか。秋の動向が俄然気になってきたが、陽が昇らない日はない。諦めなければきっと良い事がある。今回の
アサヒライジングを見て、そう思った。
馬券が外れ続けたって、いつかは大当たりが待っている。今回の
アサヒライジングを見て、そう思うことにした(笑)。