クーヴェルチュールの勝利は、これから始まるゴールラッシュの序章!?
文/編集部
前売りの段階では
アグネスラズベリが1番人気、その後は一旦
ワイルドシャウトが1番人気となり、最終的には
ローレルゲレイロが4.9倍の1番人気で落ち着いた。それだけ上位人気が入れ替わったことを考えても、いかに混戦だったかを示していた。
またレースも、1着の
クーヴェルチュールからシンガリ15着の
トールハンマーまで、
0秒9差以内に15頭が収まるという結果に。着差は
1/2、ハナ、1/2、1/2、1/2、1/2、クビ、ハナ、1、1/2、クビ、ハナ、ハナ、1/2。まるで
「宝塚歌劇団の出待ちファン」、よくもこれだけ整然と並んだものだ(笑)。
ただ、混戦模様で馬券の予想は難儀だったが、終わってみれば、
函館スプリントSで1、4、3着だった
アグネスラズベリ、
ワイルドシャウト、
ブラックバースピンに、
アイビスサマーダッシュで3着だった
クーヴェルチュールが加わっただけ。
配当も3連単は
2万馬券となったが、その他は比較的平穏な部類で、レース前に波乱を想像した人間からすれば、ちょっと物足りないもの。
昨年のキーンランドCも似たような配当だったし、そういうレースなのかなあ。
いずれにしても、勝った
クーヴェルチュールは淡々としたレースぶりだった。好スタートからスッと2番手につけ、逃げた
サープラスシンガーを直線で競り落とし、
アグネスラズベリ、
ワイルドシャウト以下の追撃を振り切って。
ただ、
「クーヴェルチュールが勝つならこのパターンだろう」という、こちらの想像通りの競馬ではあった。それを実践する馬も見事なら、テン乗りだった
横山典弘騎手もまた見事。
サープラスシンガーは前走の
函館スプリントSで、
テン33秒8で
2着に粘ったのに、
キーンランドCでは
テン33秒9なのに
14着に沈んだ。これは
クーヴェルチュール&
横山典弘騎手が、2番手から終始プレッシャーをかけていたことが要因のはず。
そういった目に見えない
横山典弘騎手のファインプレーが、
クーヴェルチュールの勝利の一因であることも確かだろう。さすが、お父さんの
ブラックホークを二度、G1制覇に導いただけのことはある(99年スプリンターズS、01年安田記念)。
ブラックホークは現役時代、
芝1200で
[2.4.1.1]、
芝1600で
[6.2.2.3]という成績だったように、
短距離からマイルを守備範囲としていた。一方、娘の
クーヴェルチュールは
芝1200以下[5.0.1.2]、
芝1400以上[0.0.0.3]と完全にスプリンター化している。
芝1200以下で負けたレースは、
1着入線後に降着となった
すずらん賞(10着)、先を見据えて控えた競馬が裏目に出た
フェアリーS(10着)、そして、
内枠で距離ロスのあった
アイビスサマーダッシュ(3着)。
要するに、負けたレースは敗因が明確であり、この距離ではまだ底を見せていない。前走の
アイビスサマーダッシュにしても、今回の
キーンランドCにしても、
「軽量という後押しがあったから」で済まされそうだけど、果たしてそうだろうか。
これまでの勝利を振り返っても、
「気づくといつもいいポジションにつけている」、
「終わってみれば1着でゴールを駆け抜けていた」という積み重ねだったりしませんか?
そういった印象をサッカー選手で例えた場合、真っ先に浮かんでくるのがFWの
元東京ヴェルディの
武田修宏、
ACミランの
フィリッポ・インザーギといった面々である。
つまりは、強靭なフィジカル、他を圧倒するテクニックを兼備しているわけではないのに、なぜか
「ゴール前でいいポジションにいる」、
「派手なパフォーマンスではないけど、結果的にゴールを挙げている」となるのだ。
FWにとってももっとも大事な、
「ゴールに対する嗅覚」が優れているということだが、
クーヴェルチュールに対してもそれと近い感覚がある。
テンにガンガン飛ばすわけでもなく、
ド派手な追い込みを決めるわけではないけど、
なんか勝つという。
そういう意味で、
クーヴェルチュールは実は、すごい馬なんじゃないかと思い始めている。淡々としたレースぶりで混戦の
キーンランドCを制したのも、これから始まるゴールラッシュの序章に過ぎないのではないかと。
ひょっとして買いかぶり過ぎ!? う~ん、
クーヴェルチュールがわからない……。とりあえず、
スプリンターズSの走りを見てから、もう一度考えてみます(笑)。