この人馬による勝利は偶然ではなく必然だった!?
文/編集部
出走馬12頭を見渡すと、前走、
小倉で逃げて勝っていた馬が8頭も占めていた。いったいどの馬が逃げて、どの馬が控える競馬をするのか。
「六つ子のおそ松くん兄弟を見た目で見分けろ!」という指令くらい、展開の見極めが難儀だった(笑)。
それは乗っているジョッキーも同じ感覚に違いない。実際、
マルブツイースターを勝利に導いた
和田騎手は、勝利ジョッキーインタビューで
「行く馬がいれば先に行ってほしいとは思ってました」と語っていた。
そして、結局、逃げることとなった
エーシンプリリードも、外から追っつけて先頭に立ったが、
佐藤哲騎手の動きを見ていると、
「えっ!? 誰も行かないの!? じゃあ俺が行くよ!」という感じだったもの。
各ジョッキーが周りの出方を窺うようなレース。その展開を予想するのは
無茶振りもいいところ(笑)。ただ、
血統と
鞍上を考えると、
マルブツイースターが勝つのがもっともしっくり来たのは確かだった。
まず、父の
サクラバクシンオーは
ショウナンカンプ(02年高松宮記念)、母父の
ウォーニングは
サニングデール(04年高松宮記念)、
カルストンライトオ(04年スプリンターズS)といった短距離G1馬を輩出している。
もちろん、短距離G1馬同士を掛け合わせたからといって、必ずしも短距離重賞勝ち馬が出るわけではない。それでも、今回は他のメンバーにそういった血統構成の馬は見当たらず、今回の
小倉2歳Sは勝つべくして勝った。
血統バカとしてはそう思いたい。
だって、
サクラバクシンオーも
ウォーニングも、
ちょっと時計のかかる芝1200がピッタリというタイプ。その特徴が
マルブツイースターにも受け継がれていることは間違いないはず。
今夏の小倉はとにかく
雨に祟られ、
小倉2歳Sのレース中にも小雨がパラついていた。
馬場の悪化も著しく、勝ち時計も
1分9秒3と時計を要した。そんな馬場条件も、
マルブツイースターには味方していたように思う。
夏の小倉2歳王者に輝いた
マルブツイースターは、今年の夏の小倉を象徴する1頭。何年か経ってから、この小倉開催を振り返ることがあったとすれば、おそらく
マルブツイースターのことを思い出すだろう。
いや、もしかすると、
圧倒的1番人気に支持されていたザサンデーフサイチ(小倉3R、2着)、オーシャンエイプス(小倉11R、5着)が期待に応えられなかった日、と認識しているかもしれないけど。その2頭がのちのち、大きいところを勝つことにでもなれば。
また、
マルブツイースターに騎乗した
和田騎手はなんと! この
小倉2歳Sが
芝1200重賞で初勝利だった。いままで勝てなかったことはたぶん、巡り合わせの部分が大きいとは思うけど、今回の勝利は
今夏の小倉を知り尽くした男の手腕の賜物と言えるはず。
和田騎手は
2回小倉の開幕から
3回小倉の最終週まで、ずっと小倉で騎乗を続けていた。
芝1200のレースは計53レースあったが、
和田騎手は
[7.4.6.28]という成績で、計45レースに騎乗していた。
騎乗回数は2位の
渡辺騎手に
8レース差をつけてトップ。勝ち星は2位の
武豊騎手を
2勝上回ってトップ。つまり、
今夏の小倉芝1200の馬場を熟知し、結果も出してきた男の最後のひと仕事だったというわけだ。
偶然は
必然とよく言う。確かに
サクラバクシンオー×ウォーニングという血統の
マルブツイースターに、
小倉芝1200リーディングの
和田騎手が騎乗したのは偶然の巡り合わせかもしれないが、今回の勝利は今年の
小倉2歳Sにもっともフィットしていた人馬による必然だった。そう思いたい。