札幌記念では、牝馬はやはり強かった
文/安福良直
札幌記念で目立つものといえば、
牝馬の活躍である。
なにしろG2になってからの10年間で、
牝馬は
5勝2着3回。出走馬は牡馬の方が断然多いことを考えると、これは驚異的な強さだ。
夏は牝馬が強い、という格言以上の力を感じる。
しかも最近は、
クイーンSから連闘で挑む牝馬が激走して、穴をあけている。しかし今年は馬インフルエンザにより、
札幌記念は
2週後ろにズレてしまった。
はたしてこの影響はどう出るか、と思ったが、やはり
牝馬は強かった。むしろレース間隔が開いた分、走りやすくなったようだ。
クイーンSでは不完全燃焼の5着だった
フサイチパンドラが、今回は逃げて後続を完封。
クイーンSで3着だった
ディアチャンスも差のない4着に来たし、やはり
クイーンS組は侮れない。
もっとも、
フサイチパンドラについては、
クイーンSがどうのこうのよりも、
G1馬がその力を見せつけた勝利と言うべきだろう。
昨秋のエリザベス女王杯を勝ったものの、その後は勝利の女神に見放され、今春は完全にスランプ状態だった。
そんな中で迎えた今回は、迷いを振り切るかのごとく逃げの一手。道中も極端にペースを落とさず、追走する側が先にバテてしまうような流れに持ち込んで逃げ切った。
フサイチパンドラは
牝馬特有の切れ味よりも、
牡馬顔負けの力強さで勝負するタイプだが、今回はその持ち味がよく活かされたレースだったと思う。
秋の牝馬G1戦線のことを考えると、
フサイチパンドラの復活は大きな意味を持つ。ただ、今回のような逃げ戦法を取るとなると、
クイーンSを勝った
アサヒライジングとの兼ね合いが難しい。
だから、次走で差して好走できれば、
エリザベス女王杯連覇も見えてくるだろう。もっとも、
札幌記念を勝った牝馬は
秋天で活躍しているので、
フサイチパンドラもいっそのこと、秋天にぶつけるのもいいかもしれない。今回のような逃げができれば、チャンスは十分だぞ。
2着には12番人気の
アグネスアークが突っ込んで波乱になった。元々はデビューから4連勝した馬で期待されていたが、その後の3連敗ですっかり評価は落ちていた。
でも、休養を挟んで馬体がたくましくなっていたし、
フサイチパンドラが作る厳しい流れでもスタミナをなくすことなく追走できた。インからうまく馬群を捌いた
津村騎手も好騎乗だったが、何よりも馬の地力強化が目立った一戦と言える。これで次走も好走したら、
マイルCSあたりでチャンスが来るかもしれない。
ただ、他の牡馬陣に見どころがなかったのは残念。
サクラメガワンダーの3着は好走とは言い難いし、
サイレントプライドはスタミナの要る流れに飲み込まれてしまった。
しかし、スタミナ豊富なはずの
マツリダゴッホや
アドマイヤフジは、いったいどうしてしまったのだろう。この辺が、
繰り上がりとはいえG1を勝った馬と、
そうでない馬との差だろうか。
そういえば、実はメンバーの中でG1を勝っているのは、
フサイチパンドラただ1頭なんだよなあ。レース前にこのことに気づいていれば……。