朝日CCでは、どうしても牝馬に目が行ってしまう
文/関口隆哉
出版社を辞め、フリーランスのライターになった直後、とあるスポーツ紙の夕刊にコラムを書く機会を与えられた。
水曜日発行版に、その週の関西地区重賞の予想を書く内容だったが、
慣れない関西地区のレース、
月曜日の夜が締め切りで、
登録を見ただけで原稿を書かなければならないという難しさ、さらには、決定的ともいえる
馬券力の不足で、そのコラムに書かれた予想は、ことごとくハズれていったのである。
そんな冴えないコラムに、突如大きな幸運が訪れた。1991年の
朝日チャレンジC、筆者は半ばヤケっぱちで、
ヌエボトウショウ-
イクノディクタスという牝馬同士の馬券を一点買いでと記したのだ。
確か理由は、
「暑い夏場を一生懸命に駆け抜けてきた、2頭の牝馬に幸あれ!」といった、多分に情緒的なものではあったのだが、実際のレースも、1着
ヌエボトウショウ、2着
イクノディクタスで、鮮やかに決まってしまったのだ。
連載の担当者から、それまでとは打って変わったおホメの言葉をいただいたのは、よく覚えているのだが、筆者には、
枠連で2010円(まだ馬連は発売されていなかった)ついた、この馬券をとった記憶がまったくない。
たぶん、当時
朝日チャレンジCが全国発売レースではなく、関東地区の競馬場やウインズで馬券を買えなかったからではないかと思うが、ひょっとしたら、自らがコラムに書いた予想をまったく信じていなかったため、全然違う組合せで勝負していた可能性も大いに考えられるのだ。
まあ、そんな出来事も青春時代(すでに20歳代の終盤を迎えてはいたのだが)の甘酸っぱいメモリーと、現在では思っているが、
ヌエボトウショウ-
イクノディクタスの牝馬決着の印象が、あまりに強烈なため、
朝日チャレンジCでは、どうしても
牝馬に目が行ってしまう。
で、今回注目したのが、8番人気馬
コスモプラチナ。勝った
アサヒライジングから0秒4差の6着した、前走
クイーンSの走りは、決して悪いものでもなかったし、
阪神コースでの連対経験もある。
さらに、鞍上は牝馬に強い
角田騎手。
「これは穴っぽい雰囲気がプンプンと漂っていますなぁ」と考えた筆者は、
「もう1頭の牝馬、最低人気のヤマトマリオンと決まってしまったら、どのくらいついちゃうんだろう!?」などとスケベなことも思いながら、レースを見つめていたのである。
直線入り口、逃げた
ヤマトマリオンを好位追走の
コスモプラチナが追い上げてきた時は、胸が大きく高鳴った。
ヤマトマリオンの脚色が怪しくなったあとも、
コスモプラチナはよく粘る。
「なんとか2着に~!」と心の中で叫んだ瞬間、1番人気
インティライミ、3番人気
ブライトトゥモローといった人気サイドの差し馬たちが、一気に末脚を伸ばしてきた。
結局、1着
インティライミ、2着
ブライトトゥモローで、
馬連配当700円という堅い決着。
コスモプラチナも5着と健闘したが、あのコラムを書いていた時代も、15年以上の歳月が流れた現在も、筆者の馬券力のなさは、あまり変わっていないようだ。