サンアディユのような馬はこの先ずっと現れない!?
文/編集部
終わってみれば、
牝馬の強さが目立った今年の
サマースプリントシリーズ。第1戦・
函館スプリントSは
アグネスラズベリ、第4戦・
キーンランドCは
クーヴェルチュール、そして第2戦・
アイビスサマーダッシュ、第5戦・
セントウルSは
サンアディユが勝利した。
第3戦・
北九州記念でも、
アルーリングボイスが
クビ差の2着に走っているわけだから、牝馬は準パーフェクト。凄まじい暴れっぷりだった。その中でもやはり、同シリーズで2勝を挙げた
サンアディユの活躍は
素晴らしいのひと言に尽きる。
まずは人気。
アイビスサマーダッシュでは、
単勝77.1倍の13番人気。
セントウルSでは、
単勝30.8倍の11番人気。
シリーズ中にふた桁人気で2勝するというのはかなりの離れ業だろう。
初代王者の
シーイズトウショウは
函館スプリントS(2着)、
キーンランドC(2着)、
セントウルS(1着)はすべて1番人気。人気に即した走りはそれはそれで確かに素晴らしいもの。
だが、
サンアディユのような馬は、
サマースプリントシリーズが来年以降も続いていくのなら、この先ずっと現れないと思う。そもそも
「芝の2勝は重賞です」なんて馬は見たことがない。
「シリーズ中にふた桁人気で2勝し、なおかつ、その勝利=芝の全勝ち星」なんて馬は、
サンアディユが最初で最後。もし第二の
サンアディユが現れるとすれば、人間が月で生活しているくらい、遠い未来のことでしょう(笑)。そう考えると、
シーイズトウショウとは違う意味で、その偉業を称えたくなる。
次はそのパフォーマンス。
重馬場で時計のかかった
アイビスサマーダッシュでは、出遅れながらも差し切り勝ち。
開幕週で高速馬場の
セントウルSでは、好スタートを決め、番手からきっちり抜け出して5馬身差の圧勝。
しかも
セントウルSでは、体が前走から
18キロも増えていたにもかかわらず、
「でも、そんなの関係ねぇ!」と言わんばかりの競馬ぶり。異なるコース、馬場でそれぞれに高いパフォーマンスを示したのだから、2勝という数字以上に内容は濃いと思う。
セントウルS全体に関しては、
サンアディユの人気を見てもわかるが、
「牝馬を少し侮りすぎ」という印象を受けた。2着に好走した
カノヤザクラが
7番人気、クビ差の4着だった
アルーリングボイスが
8番人気だったし。
牡馬は1番人気だった
キンシャサノキセキがなんとか3着に入り、意地を見せたと言えるけど、あわや牝馬のワンツースリーだったのだから。
セントウルSは00年から、
4回阪神の開幕週に移行したわけだが、
今年を含めた8回で牝馬は6勝。牡馬の2勝は
ゴールデンキャストの連覇だが、同馬は7~9月で6勝を挙げている夏馬である。
つまりは、
夏の延長線上というポジションに配置されてから、
セントウルSでは
牝馬を上位に考えなければいけなかったのだ。これは3連単を買う際に、1、2着に牝馬を据えるのを躊躇した自分への自戒の念も込めて、そう思った。
「結婚すると女は変わる」とよく耳にする。ありがたいことに、いまのところ我が愚妻にはそのような兆候が見られていない。ただ、年を重ねるごとに、したたかになっていきそうな予感はなくはない。
一方の
サンアディユは、
サマースプリントシリーズを経て、
「ダート界のいち牝馬」から
「芝短距離界のシンデレラ」へと劇的に変貌した。わずかな期間に、よくぞこれだけ変わったものだと関心する。
どちらにしても、
女は怖いということ。
セントウルSで
牝馬に押し退けられた牡馬勢を見ていて、
近い将来の自分を見ているような気がした。あくまで
気がしただけ。
「家庭でもセントウルSでも、女には逆らうな!」この教訓はしっかりと胸に刻んでおこう。