10年の時を経て、メジロマックイーンの血を引く菊花賞有力馬が出現
文/編集部
90年代前半の競馬を見ていた人間にとって、
メジロマックイーンは絶対的な存在だった。
菊花賞制覇、
天皇賞(春)連覇、
宝塚記念も優勝し、生涯19戦のキャリアで12勝。馬券圏外となったのは、
降着処分となった
天皇賞(秋)と
ジャパンC4着だけで、絶大なる信頼感のある馬だった。
その
メジロマックイーンの血を引く馬が2頭出走していた今回の
神戸新聞杯。直仔の
ホクトスルタンと、娘の仔にあたる
ドリームジャーニー。この2頭が4着と1着に入った。
長距離戦で圧倒的な安定感を誇った
メジロマックイーンの血が、
2400mという長距離戦で力を発揮した。そう言うのはちょっとひいき目過ぎるだろうか。
メジロマックイーンが現役引退したのは
93年秋。初年度産駒がデビューしたのは今からちょうど10年前(97年)だが、当時は
マックイーンの後継馬を探しに東西のトレセンに行ったものだ。
そこで、栗東のある調教師にこう言われた。
「マックイーンにいちばん似てるのは、池江さんのところにおるよ」。
その馬は
メジロマックイーン×ノーザンテーストという配合の芦毛馬で、確かに見た目が父親に似ていた。
シュペルノーヴァという名前のその馬は、
年明けの京都ダート1800mでデビューし、
武豊騎手が騎乗して快勝。さすが親父に似ているだけのことはあると思ったものだ。
しかし、その後は父親ほどの上昇曲線は描けず、通算4勝をマークしたものの
準OPクラスで引退した。
あれから10年。姿形は父親のステイゴールド似ではあるものの、
メジロマックイーンの血を受け継ぐ馬が
菊花賞トライアルを制した。
ドリームジャーニーは、
ステイゴールド×メジロマックイーンという配合で、母の母の父は
ノーザンテースト。マックイーンにいちばん似ていると言われた、あの
シュペルノーヴァのおいにあたる血統だ。
管理する
池江泰寿調教師は、マックイーンを管理した
池江泰郎調教師の子息。10年という時を経て、
馬も
調教師も世代がかわったものの、
マックイーンの血は引き継がれ、
菊花賞の舞台に立とうとしている。
ドリームジャーニーが今回記録した上がり3Fは
34秒5。実はこのタイムは、
自身のキャリア8戦の中では3番目に遅いものだ。
それでも今回の出走馬15頭の中では最速で、上がりタイム2位は2&3着の
アサクサキングスと
ヴィクトリーが記録した
35秒4。つまり、
ドリームジャーニーは、最後の600mで
アサクサキングスらとの差を
0秒9も縮めたことになる。
仮に
菊花賞が
良馬場で行われるとしたら、この差は大きなアドバンテージになるだろう。
今回と同じようにドリームジャーニーが折り合えればという条件付きではあるが、直線が平坦なコースの方が切れ味が増すのは明白。
ドリームジャーニーはデビュー戦以外は坂のあるコースを走っているが、それでも
33~34秒台の脚を使っている。
思えば、父の
ステイゴールドは国内での5勝のうち2勝を
京都で挙げ、海外で優勝した
ドバイSCと
香港ヴァーズはどちらも
平坦(阪神は0勝)。母父の
メジロマックイーンは、
京都での通算成績が
[5.3.1.0]。
ドリームジャーニーが平坦が合わないとは考えづらい。
上がり3Fタイムが発表されている93年以降の菊花賞成績を見ても、過去14回のうち半分の7回で
メンバー最速の上がりを出した馬が優勝している。
メンバー3位以内の上がりで優勝した馬は11頭を数え、上がりの速い馬が勝てなかったのは、
セイウンスカイや
デルタブルースなど、先行馬が早めスパートから押し切ったケースのみ。
ドリームジャーニーは、キャリア8戦の上がり3Fがすべてメンバー3位以内(1位が5回)で、鞍上が
「測ったように差し切れる男」武豊騎手というのも何とも心強い。
もちろん、
トライアルを
トライアルとして戦った馬たちが、
菊花賞までに能力を上積みしてくる可能性も否定できないが、現時点では、
ドリームジャーニーが第68代菊花賞馬にいちばん近づいた、と言って過言ではないだろう。
逆に、
有力馬の中でいちばん菊花賞から遠ざかってしまったのは、
フサイチホウオーと言わざるを得ないだろう。
道中は中団の外目を追走し、直線に向いても何の不利もなかったように見えたが……。レースの上がり3Fが
35秒4で、
ホウオー自身は
36秒5なのだから、明らかにおかしい。
過去20年の
菊花賞で、
前走ふた桁着順の馬は[0.1.1.30]。このデータを覆す力が
フサイチホウオーに残されているだろうか……。
父の
ジャングルポケットは5勝中3勝を
東京で挙げ、
京都&阪神では
未勝利。母の
アドマイヤサンデーが
1600~2000mで活躍したことと考え合わせると、
東京芝2000mの
天皇賞(秋)というプランもあり得るのかもしれない。