ダイワスカーレットの地力の高さは、正直、想定外だった
文/関口隆哉
「速さ」ということにフォーカスをあてれば、
桜花賞を
1分33秒7、前走の
ローズSを
1分46秒1という快時計で制した
ダイワスカーレットに一日の長があるのは間違いないところだろう。
一方、
「強さ」にこだわれば、
ダービーで男馬たちを3馬身突き放して圧勝した
ウオッカに軍配が上がる。この
秋華賞における2強の争いは、
「速さと強さのどちらが問われるレースとなるのか」が、勝敗の分かれ目となるはずなのだ。
そこで、レース前にこんな推論を立ててみた。勝ちタイムが1分59秒を割る、あるいは59秒を少し上回る程度なら
ダイワスカーレット有利、一方、1分59秒台後半から2分台に乗れば
ウオッカが勝つ可能性が高いはずだ。
そして、この日の
京都競馬場で行われた9R・
堀川特別(1000万下)の勝ちタイムは
1分34秒7。前日のG2
デイリー杯2歳Sにおける
キャプテントゥーレの勝ちタイムが、前年の
オースミダイドウより
1秒3も遅かったことも考え併せると、いまの京都コースは、極めつけの高速馬場というのではなく、
やや力の要るコンディションだと判断できた。
ならば、勝つのは
ウオッカ。それが馬券を買う上での、筆者の最終決断となったのである。
ゲートが開き、
ウオッカ、
ダイワスカーレットともに好スタートを切る。
ダイワスカーレットは逃げた
ヒシアスペンの2番手、
ウオッカは中団の外から競馬を進めた。
ヒシアスペンが快調なペースでハナを切ってくれたおかげで、
ダイワスカーレットは2番手でキッチリと折り合いを付けることができた。そして、道中で無駄な脚を使わなかったことが、その後の
ダイワスカーレットの凄まじいまでのパフォーマンスに繋がる。
3コーナーを回るところで、脚色の鈍った
ヒシアスペンを交わして、
ダイワスカーレットが先頭に立った。
ウオッカもマクリ気味に押し上げてきたが、
ダイワスカーレットとの差は、まだ大きい。
直線に入り、
ダイワスカーレットが、さらに勢いを増していく。後続をグっと引き離し、残り1Fの段階では、すでに安全圏に入ってしまったようにも見えた。
ゴール前で、内を抜けてきた
レインダンス、外から追い上げてきた
ウオッカが併せ馬のような形で差を詰めてきたが、
ダイワスカーレットと鞍上の
安藤勝己には余裕があった。
クビ差
ウオッカを競り落とした
レインダンスに
1馬身1/4差を付けて先頭でゴール。着差以上の楽勝で
ダイワスカーレットは
桜花賞に続く、2つ目の3歳牝馬G1タイトルを獲得した。
勝ちタイムは
1分59秒1。まあ、筆者のレース前の推論は結果的には当たっていたわけだが、この日の馬場コンディションのなかで、この時計を叩き出してしまう
ダイワスカーレットの地力の高さは、正直、
想定外のものでもあった。
「素晴らしい速さと恐るべき強さを兼備した歴史的名牝が誕生した一戦」間違いなく、
07年秋華賞は、競馬ファンの間に末永く語り継がれるレースとなるはずだ。