カメラマン泣かせの大接戦となった要因はどこにあったのか?
文/編集部
内から先に抜けた
マイネルシーガルに、馬場の中央から迫る
マイケルバローズ。その間を突いたのが
トウショウカレッジと
グレイトジャーニーで、大外から追い込んできたのが
エアシェイディと
アンブロワーズ。
位置取りを正確に記すためにもう一度レース映像を見直したんですが、何度見ても大接戦ですねぇ。当たり前だけど(笑)。
勝った
マイネルシーガルの走破タイムは
1分33秒3で、そこから3着のトウショウカレッジまでが同タイム。さらに4~6着が0秒1差の
1分33秒4で並ぶという僅差だった。
これだけ横一線に並ぶと、本当に困るんですよ。月曜日に会社に行くのがちょっと恐いくらい。それは、
1着馬を撮れていないカメラマンが続出するからです(苦笑)。
テレビや
場内のターフビジョンで見ていると、半馬身差やクビ差くらいなら間違いなく撮れそうに思いがちですが、
馬場で見ていると接戦の時は本当にどっちが先にゴールするか分かりづらい。今回のように馬体が併せられていない時は、特に難易度が増す。
外ラチの下からレンズを構えているカメラマンの中には、
ラジオ実況をイヤホンで聴きながら撮影する人がいたり、
写真を撮らない人に「内です」(先着しそうなのは内です、の意味)とか「外です」と教えてもらうケースもあるほど。
しかし、今回の
富士Sでは、たとえそんな補助員を動員しても、
「内にいる外です」とか
「外のさらに外です」と言ってしまいそうで、余計に混乱を招きそう。
今回のように、内で粘る馬を追い込み馬が外から迫った場合、レンズを外に振るカメラマンが多いので、果たしてどのような写真が撮れているか…。
月曜発売の競馬週刊誌や、
来月13日に発売予定の本誌『サラブレ』にどうぞご注目ください(笑)。もし掲載写真がゴール前のきれいなものじゃなかったら……
「残念でした」と思っていただいてけっこうです。
さて、そんな大接戦となった今年の
富士Sだが、これだけ僅差となる要因はどこにあったのか。
レースラップを分析すると、前半の半マイルは
46秒4で通過している。近3年は、
46秒5(04年)、
46秒6(05年)、
46秒6(06年)なので、ほぼ例年通り。
ただ、近3年の勝ちタイムが、
1分33秒2(04年)、
1分32秒9(05年)、
1分32秒8(06年)なので、
1分33秒3の今年は少しかかっているとも言える。
マイネルシーガルは内ラチ沿いをロスなく走り、何の不利もなく抜け出したのだから、それほどレベルが高いとは言えないんじゃないか。時計だけを見ればそう考えがちだが、道中での位置取りを考慮すると、そうとも言い切れない感じがする。
過去3年の勝ち馬は、
4コーナーで5番手以降から差している。04年の
アドマイヤマックスは
3角8番手・4角7番手という位置取りで、05年の
ウインラディウスは
3角7番手・4角5番手、06年の
キネティクスは
3角6番手・4角5番手。
それに対して
マイネルシーガルは、
3角も4角も3番手。
「最後は馬も人も気力だけでした」と
後藤騎手がレース後に語っていたが、先行して押し切ったことは、素直に評価するべきだろう。
だとすると、接戦を誘発したのは差し切れなかった馬たちか?
しかし、
エアシェイディや
トウショウカレッジは
33秒台の上がりを使っているんですよね(
エアシェイディは
33秒4、
トウショウカレッジは
33秒9)。
ウインラディウスや
アドマイヤマックスは34秒台の末脚で差し切っているので、これはこれで悪くないと言える。う~ん…。
結局のところ、どの馬も
「勝ちたい!」との執念がみなぎったから、ラップなどの数字では推し量れないミラクルが起こった、と判断すべきなのかもしれません。で、
その余波がカメラマンたちを襲った、と(笑)。
大接戦を演じながら敗れた馬たちは、ほとんど差がなかったのだから悲観する内容ではない、と言われることだろう。
でも、個人的には、やはり競り勝ったことは評価するべきだと思うんですよね。
「1着は必然、2着は偶然」との言葉があるように、2着は
偶然でも起こりうるが、1着になるには
根拠と実力が必要になるもの。
これまでの重賞では惜敗を続けてきた
マイネルシーガルなら、その言葉の重みも理解できるのではないか。素人目にはハッキリと見えなくても、成長しているからこそ、今回、1着をもぎ取れたのだと思う。
過去の富士S優勝馬は、マイル戦になって以降は7年連続で次走で
マイルCSへ向かっている。その着順は、
10着、8着、5着、5着、6着、10着、18着。
「トゥー…」という感じではありますが、たとえ敗れたとしても、まだ
3歳馬である。父が
マイルCSを勝ったのは
4歳秋。その時の走破時計は
1分33秒2だった。
息子
マイネルシーガルはまだまだ成長が見込めるはずで、1年後には今回の走破時計を0秒1縮めることぐらいは容易にできるはず。あとは、
父が優勝した6年前とのレベル差(タイム差)をどこまで縮められるかだ。
マイネルシーガルは、今年の3歳世代の中で、
古馬相手の芝重賞を初めて制した牡馬。だから、少しぐらいは大きな期待をしてもいいんじゃないですかね。