アサクサキングスは入念な調教で鍛えて勝った
文/井内利彰
「2歳チャンプ」「皐月賞馬」「4戦無敗馬」と人気が納得できる肩書きを持った馬が揃った
菊花賞。しかしながら、その馬たちにも確固たる支持が集まったわけでなく、我々マスコミ関係者の中でも
「混戦」と呼ばれるレースでした。
その理由は人気馬にそれぞれの弱点があったからでしょう。
前哨戦である
神戸新聞杯を快勝した
ドリームジャーニー。鞍上も考えれば、信頼を置いてもよい実績の持ち主ですが、戦前から
武豊騎手が口にしていた不安は
「距離」。
過去に何度も
菊花賞や
天皇賞春を制し、
「淀の長距離G1」の勝ち方を知っている騎手の言葉。重みがありました。レースでは弱点を克服すべく、最後方の競馬に徹しましたが
5着。これは持ち味を最大限に活かすことができた結果だと思います。
休養明けの神戸新聞杯3着、
ひと叩きの上積みが期待された
ヴィクトリー。ただこの馬には
「折り合い」という長距離戦でもっとも重要とされるファクターに不安がありました。調教でもその不安を解消すべく、他厩舎の馬を借りてまで折り合いをつける練習をこなしました。
その結果、調教では実に折り合って走ることができるようになり、私自身もこれならと思って
◎を打ちました。しかし、実際は道中ずっと折り合いを欠いて
惨敗。やはり調教と競馬は違うという結果になり、私自身もあらためて競馬の難しさを感じました。
セントライト記念を勝った無敗馬
ロックドゥカンブは、
負けていない魅力と
南半球産で受けた2キロの恩恵で人気。しかし、
初めての強敵相手、
京都への輸送、そして
淀の長距離に対する騎手の経験不足。
これらの不安要素を抱えて
3着という結果は大健闘。今回の経験を活かして、今後はさらに活躍できるのではないでしょうか。
そして、勝った
アサクサキングス。人気を背負った
皐月賞では
「経験の少なさ」や
「関東輸送による調整の難しさ」から
7着という結果になりましたが、
ダービー2着など、クラシック戦線では常に上位の競馬ができていました。
そして、この秋は中間の調教量も増え、坂路とDWを併用して実に入念な調教で鍛えて勝った印象です。
アサクサキングスと同厩舎の
エーシンダードマンは
4着。休養明けとはいえ、前走の1000万で3着だった馬がここまで走ることができたのはこの中間の
「スパルタ」調教の賜物でしょう。
それだけに、今後のG1では流れが速くなると予想できるレースに、
大久保龍志厩舎の馬が
「これでもか」というまでに調教を課していれば、注意しなければならないと思います。