08年牝馬クラシック戦線も、間違いなく面白いものになりそう
文/関口隆哉
「出走馬の半数以上に勝つ可能性がある一戦」毎年のように難解なレースとなる2歳牝馬限定G1
阪神JFではあるが、中でも今年は、
極めつけの大混戦といえる、実力伯仲のメンバー構成となった。
こういう、よく分からないG1戦の場合は、
とりあえず血統に頼って馬券作戦を組み立ててみるというのが筆者の基本方針だ。
で、まずは前週
ジャパンCダート、
ジャパンCを連勝した
母父サンデーサイレンスの勢いに乗じて、
レジネッタ、
アロマキャンドル、
ラルケット、
トールポピーの
BMSがSSという4頭をピックアップしたのである。
さらにこの中から、前年の
ウオッカ(父タニノギムレット)と同じく
新種牡馬の娘ということで、
ファルブラヴ産駒の
ラルケットを本命馬に指名。
そこから、上記の
母父SSの3頭と、母娘二代に渡る阪神JF制覇を狙う
ヤマカツオーキッド、同レース2着で終わった母
キュンティアの無念を晴らしたい
オディールという
「血統のロマン」を感じさせる2頭を加えて、馬単連勝を流し買いしたのである。
「なんだか、スゴく当たりそう……」。まあ、基本的には根拠のない自信ではあるのだが、筆者は妙に楽天的な気分となり、ゲートが開くのを心待ちにしていた。
ところが、わが本命馬
ラルケットは、スタート直後に大きく出遅れてしまったのである。その後、大外を回って中団まで押し上げてきたが、道中で余分な脚を使ってしまっていることは明らかだった。
そんな
ラルケットはともかく、ハイペースで流れたレースは、
厳しいサバイバル戦の様相を呈していた。
直線、内から伸びてくる
レジネッタ、外から襲いかかる
カレイジャスミンを抑え込んだ1番人気馬
オディールが先頭に立つ。だが、いつもの逃げを封印し、中団追走から差し脚に賭けた2番人気馬
エイムアットビップが
オディールを交わす勢いで追い上げてくる。
この馬で決まりかと思えたが、ゴール寸前で大外から3番人気馬
トールポピー、8番人気馬
レーヴダムールが併せ馬の形で急上昇してきた。
最後は
レーヴダムールをクビ差抑えて
トールポピーが先頭でゴール。どうしてもG1を勝てない全兄
フサイチホウオーに先んじて、ビッグタイトルを獲得することとなった。
馬券的には、
極めて不本意な一戦(案の定
ラルケットは直線で伸びず10着に敗退した)ではあったが、2歳牝馬たちが演じたレベルの高い混戦は、見どころ十分のものとなった。
ウオッカ、
ダイワスカーレットといった傑出馬が出た07年とは違った展開になりそうだが、
08年牝馬クラシック戦線も、間違いなく面白いものになりそうだ。
当然、勝った
トールポピーも、これで4カ月後の
桜花賞での勝利が確約されたわけではない。息の長い末脚には、将来性も含めて高い評価が与えられるが、このレースに限っていえば、2着
レーヴダムール同様、展開に恵まれた面も大きかった。
地力のあるところを示したのが、3着
エイムアットビップ、4着
オディールの2頭。中でも、厳しい流れを先行して押し切ろうとした
オディールのレースぶりは、
「敗れてなお強し」というものだった。
いずれにしても、まだまだ
大混戦模様が続きそうな
08年牝馬クラシック戦線。今回は完敗を喫した
ラルケットにも、名誉挽回の余地は十二分に残されていると思う。